次から次へとアイデアがひらめく“発想の型”って?
公開日:2018/9/18
新しいことを考え出し、それを実用化させるという人間の想像力には「おおっ!」と驚かされることがよくある。最近でいうと自宅に居ながらにして自分の着るべき服のサイズがわかるZOZOSUIT(ゾゾスーツ)であったりとか、スマートフォンのなかにクレジットカードやSuicaのような交通系電子マネーの機能を組み込んでしまったりといろいろ思い浮かぶ。
こうした新しいアイデアはいったいどのようにして生み出されるのだろうか。何か新しいことをひらめくためには、「情報や知識を頭に入れておくこと」「さまざまな視点から物事をとらえること」「 一生懸命考えたあとにいったんその作業から離れること」の3つが一般的によく言われているようである。
しかし、この3つの手段を駆使してもなかなかいい考えがひらめかないということだって往々にしてある。『ひらめきスイッチ大全』(知的創造研究会:編/日本経済新聞出版社)は、どうしても新しいアイデアを思いつきたいときに有用な225の「先人たちの“発想の型”」をまとめている。先に述べた3つの王道以外にこんなにも“発想の型”が存在したことには驚嘆した。明日から使えるアイデアの源を少し以下に見ていこう。
■考えをまとめるためにはとりあえず書いてみる
質の高いアイデアを思いつくためにはもちろんそれに関連する資料を集めることが大切である。しかし、集めすぎてしまうとそれのどの部分を使っていいかがわからなくなり、資料を前にして呆然と立ちつくしてしまう。
そういうときは、とにかく書き進める。資料にある既存の考えをいくつか組み合わせてとにかく自分の思いついたことを紙に書いてみる、あるいはキーボードでパソコンの画面上に打ち込んでみるといい。気づけばそこには自然とできあがった独創的だが検証可能かつ実践的な論理が、また思いがけないひらめきが浮かび上がっていることもある。
わたしも卒業論文の執筆の際に、「資料集めは済んだものの筆がまったく進まない」という状況に追い込まれたことがある。そんなときに教授から、書くべきことではなくて自分の書きたいことを書いてみるよう言われた。そんなことで筆が進むのか、独創的な理論ができあがるのかと訝しく思ったことだが、実際にやってみるとこれがかなりうまくいった。
とりあえず書いてみるだけなのに、思考することだけにとどまっているときより気分も筆を持つ手も軽くなった気持ちになれる。この方法は「ブリコラージュ(Bricolage)※」と呼ばれており、考えをまとめる際の下ごしらえとして非常に有効なのだそうだ。
※ブリコラージュ(Bricolage):フランス語で「寄せ集め」の意味
■暗黙のルールは疑ってかかる
暗黙のルール、それは世の中の常識や決まりごとだ。おおむね誰もがこの暗黙のルールなるものを——成文化されているわけでもなく、罰則があるわけでもないのに——律儀に守っている。
たまにはそれをぶち破ってみてはどうだろう。突破した先に広がるのはまだ誰も足を踏み入れたことのない、いわばフロンティアだ。そこに落ちているのはたくさんのアイデアのタネ。過去の画期的なひらめきも暗黙のルールを破ったことで芽を出したのである。
そのひとつに「本屋大賞」がある。2004年の設立以来、受賞作品のすべてが映像化・漫画化されていることで有名な文学賞だ。これまで、文学賞といえば文壇のエラい人たちが集まって作品を審査するというのが暗黙のルールだった。
「本屋大賞」の提案者の嶋浩一郎さんはこの審査員を作家や文芸評論家ではなく書店員に置き換えてみたのである。全国の書店員がノミネートから審査までを担当して最終的に選ばれた作品にはものすごい説得力がある。こうして「本屋大賞」に選出された作品の数々は瞬く間に話題を呼ぶこととなった。
暗黙のルールを破ることで、既存のものを凌駕する新たなアイデアまでもが生み出せてしまうのである。
本書には、ひらめきたくてもなかなか電球が灯らないみなさんのために、ここに挙げたもの以外にも実に多様な“発想の型”がそろっている。新しいアイデアを生み出すために本書を活用しない手はない。
文=ムラカミ ハヤト