『この世界で君に逢いたい』
藤岡陽子／著

　 与那国島に来た大学院生の周二は、そこで出会った花という少女が心から離れなくなる。彼は花のなかに17年前亡くなった従妹の姿を見た。花を父親のように見守るのが、製糖会社を営む傍ら、家庭に問題があったり社会に適応できず島留学をしてくる青少年の世話をしている榮門。ふたりの男性を語り手とし、花の物語は進む。彼女は自分でもそれが何かわからないまま〈探しもの〉を続ける。作中で周二が言う〈親に抗えない子〉の悲しさ、榮門が話す〈子供を持つ喜びと怖さ〉に首肯。魂が放つ深い思いに胸を締めつけられた。

今回は、健気なオーラの本と出合った。