5年先の日本が見えてきた! 経済予測に必要な10の判断基準
公開日:2018/9/24
日本はバブル崩壊後、四半世紀に及ぶ経済停滞に陥っている。外国への財・サービスの輸出もあるが、主に日本の経済を支えているのは内需、つまり国内における個人消費だ。個人消費を活性化させるための有効な手立てのひとつに名目賃金率の上昇が挙げられている。この名目賃金率上昇に大きくかかわるのがインフレである。インフレを起こすために、日本政府は国債を買い、貨幣の流通量を限界まで増やしているが、目標とするインフレ率を達成する見込みはまだない。
これから日本がさらなる経済成長を遂げるためには有効な経済政策をとるべきだが、これに必要不可欠となるのが「未来予測」である(断っておくと、いまの政府が行う経済政策が無効だと言っているのではない)。これからみなさんに紹介する書籍『シャルマの未来予測 これから成長する国 沈む国』(ルチル・シャルマ:著、川島睦保:訳/東洋経済新報社)はこの未来予測の重要性を説く1冊だ。本書では未来について判断するためのパラメータを10挙げており、この10の事項を観察する眼を養うことを目的としている。
■未来予測は何年先まで有効か?
まず、本書の中で著者がみなさんに心に留めておいてほしいと思っていることを紹介する。それは未来予測の有効性は「5年先」までであって、それより先のことについての予測はほとんど不可能であるということだ。四半世紀前までであれば、10年先の予測も可能だったかもしれない。しかし、情報・通信技術が格段に発達し変化のスピードが急速に上がった現在では、世の中の様子が目まぐるしく変わっていくのが当然で、はるか先の予測は困難になっていることは言うまでもない。
さらに付け加えて紹介すると、今後本書で示されている評価基準によっては、国の経済成長を格付けする手法も変わり、基準の内容もさらに進化している可能性が高いという。基本的な評価のコンセプト自体は変わらないと思われるが、国の発展や衰退を予測する場合に最も信頼できるやり方は、実践的な時間軸、つまり短いスパンでの評価基準を活用した手法となることを忘れてはならないのである。
■注目すべき未来予測の判断基準は「インフレ」と「デフレ」
わたしは、日本の未来予測を大きく左右する判断基準は、「インフレ」と「デフレ」だと考える。
結論から先に言えば、高インフレも長期的なデフレも、経済成長にとってはよくない。まず高インフレに関して言及すると、経済成長に伴ってインフレ率がみるみる上昇していっても好景気はそれほど持続しない。なぜなら、さらなるインフレの加速を回避するために、中央銀行が予防的に金利を引き上げるからだ。金利を引き上げるとどうなるか。金利とは、簡単に言えば、お金を借りるときの手数料だが、これが上昇すると市中に出回る通貨量が減少して景気が沈滞するのである。
一方、デフレに陥ると物価は下落に向かう。こうなると消費者は(先に述べた、日本経済を支えているのは消費者だということを思い出してほしい)、購入したいと考えているモノ・サービスの価格が低下するのを待つようになる。それがさらなる物価下落圧力を生み、企業は値下げに応じざるを得なくなるのである。そうすると企業の収益は減少してしまい、経済成長が停滞するのである。
このように「インフレ」「デフレ」に注目することで、経済全体が成長するのか停滞するのかが判断できるというのが、これでお分かりだろう。
本稿では残念なことに、経済成長にかかわる10の判断基準のうちたったひとつにしか言及できなかった。残りの9つについては、本書を手に取り、みなさん自身で知識を取り込んで理解してほしいと思う。本書がきっかけとなり、多くの人が自分自身で精密に未来予測ができるようになることを期待する。
文=ムラカミ ハヤト