9割の人は知らずに損している!? 申請すればもらえるお金って?
公開日:2018/9/25
生活スタイルは人それぞれだ。未婚者もいれば既婚者もいる。子どもをもうけて育児に奮闘している人もいれば、親の介護に奔走している人、自然災害や不況の影響で事業や生活を立て直している人など、それぞれに違いはある。生きていれば何らかの困ったことが起こるのは誰しも同じことだと思う。自分の場合は、不況によって「生活することが大変だ」と感じた。失業して預金も切り崩し、そのとき初めて行政を頼ってみようと補助金や助成金をネットで調べ、奔走したが、自分たちに合ったものに辿り着くまでの異常な手間に驚いた。肝心の国民が自分で得られる情報が少ないのである。
『届け出だけでもらえるお金』(井戸美枝/プレジデント社)は、現在日本で利用できるさまざまな補助金や助成金、制度などをまとめてくれている本だ。本書にも書いてあるが、まさに一家に一冊常備しておきたい薬箱のようなもの。結婚から出産、育児、就学、住宅や介護、葬儀に至るまで、全部で96の制度が書かれている。目次は、項目別と年齢別に追っていけるものがあり、年齢別は「人生100年マネー大獲得ゲーム」と題したスゴロクのようになっているのも楽しい。自分に今必要な制度などが簡単に見つけられるのだ。
中には、UターンやIターン、Jターン支援金まである。Jターンとは、就学などで故郷から遠方の地域に出た人が、就職や結婚などで故郷から近い地域に移住すること。それでも、216万円もの支援金の対象になるとは驚きだ。
自然災害で住居が半壊したときに支給される「被災者生活再建支援制度」などは、自然災害の多い日本でぜひ知っておきたい制度。なんと、200万円支給される。さらに、世帯主が自然災害で負傷した場合は、「災害擁護資金」として最大で350万円貸付されるという。貸付額の決定には、世帯人数や前年度の総所得額などの条件が考慮されるが、それでもまとまったお金が入るのは心強い。
何か起こったときに先立つものは何と言ってもお金だ。世間には「お金がすべてではない」という言葉を口にする方もおられるが、実際に驚くほどお金がなくなった経験を一度でもすると、とてもそのようなことは言えない。現代人はお金がないと生きられないのだ。水一滴すら飲めなくなる。
自分が実際に暮らしに事欠くまでの経験をしてしまうと、「もっと誰もが分かりやすい制度の調べ方」や「利用しやすいシステム」はできないものだろうかと考えるようになった。このように行政から受け取れるお金は、事業向けの補助金や助成金もかなり多い。しかし、実際にはあらかじめ知識を持っていないと辿り着けないものが多いことに疑問を感じてしまう。だからこそ、社会保険労務士でもファイナンシャルプランナーの井戸氏のような著者が、こうしてまとめてくれる意味が出てくるのだが。
本書では、後半の方に老後の項目が出てくる。中でも、年金について、国民年金に厚生年金、加給年金と、さまざまなタイプに向けたお得な受給方法がまとめられているので、ここも見ていただきたい。昔のように子ども家族と同居できない高齢者は多く、自分の収入だけで生計を立てる高齢世帯は珍しいことではないからだ。受給開始時期を遅らせるだけで受け取れる額は変わってくる。本書から抜粋すると、5年繰り下げて早く受け取ると200万円近い加給年金がもらえなくなるのだそうだから、これは大きい。
もちろん、制度はあっても、受給できる額は個人の条件などで多少の差は生じるものもあるが、知らないと損な情報が満載の本である。結婚のお祝いとして贈るのもおすすめの一冊だ。
文=いしい