知らないとヤバイ! 親の介護が必要になったら…もしもに備えて押さえておきたいポイント

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更新日:2018/9/26

『親の介護でパニックになる前に読む本』(結城康博/講談社)

 年を重ねるにつれて、親の行く末を案じる機会も増えてくる。盆暮れ正月に実家へ帰ると、ふとしたときに「オヤジの背中がひと回り小さくなったな」と思うこともあり、この先もし、父親や母親が何かの病で倒れてしまったらという考えが頭をよぎる瞬間もある。

 そして、もっと具体的に将来を考えたとき、頭をよぎるキーワードの一つが「親の介護」である。少子高齢化社会の現状ではさまざまな課題も思い浮かぶが、不安を抱える人たちのために、ヒントを与えてくれる書籍『親の介護でパニックになる前に読む本』(結城康博/講談社)を紹介したい。

●介護施設入居までに在宅での介護が必要となる場合も

 初めに、介護にまつわる気になる数字をいくつか紹介しよう。世界屈指の長寿大国として知られる日本には現在「100歳を超える高齢者が約7万人」もいるという。
生きていられる年数を示す「平均寿命」の一方で、生きていられる年数のうち健康に生活できる年数は「健康寿命」と呼ばれ、それぞれの差は「女性で約12年、男性で約9年」となっている。

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 この差がいわゆる“介護が必要になりうる期間”となるが、本書に掲載されている厚生労働省の調査を参考にした統計によれば、おおむね何らかの支援が必要になってくるのが70代以降。子どもの立場から見れば、働きざかりの40〜50代から親を支えることになる可能性が高いわけだ。実際、仕事のかたわら介護に携わる人は男女合わせて約291万人と、けっして無視できない数字となっている。

 しかし、ここで思い浮かぶのは“親を施設に預ける”という選択肢はあるのかということ。たびたび取り上げられる“介護離職”の問題とも関連するが、そこで参考にしたいのが、本書が示す「特別養護老人ホームの入所待ち時間」だ。

 介護施設の種類はさまざまであるが、特別養護老人ホームは比較的「介護者から人気の高い施設」であるという。2010年に厚生労働省による補助金事業をきっかけとして全国各地で増加してきたが、現状、新規の申込者が入所にいたるまでの期間は平均で1年3ヶ月。つまり、たとえ施設へ預けられるとなっても、その期間内は在宅での介護が必要になることを意味している。

●介護保険制度の誤解。要介護認定までのブランクも注意が必要

 介護する家族にとってもセーフティネットになりうる仕組みが「介護保険」だ。少子高齢化社会をふまえて2000年4月から施行された社会保険制度の一種だが、健康保険証を受け取った時点から恩恵を受けられる「医療保険」とは異なり、手続きには注意点があると本書は促す。

 例えば、介護保険の被保険者には「介護保険証」が手渡される。しかし、介護保険証があったとしても、すぐに施設やサービスを利用できるわけではない。まずは介護保険対象者であることを示す「要介護認定」を受けることになるが、認定結果が出るまではおおむね30日程度待たねばならない。急を要する場合は結果を待たずに介護サービスの利用を開始できるのだが、運悪く「非該当」すなわち「元気な高齢者」という結果が出ると恩恵を受けることはできなくなる。

 また、要介護認定の手続きでは要介護者本人または家族からの申請を受けた自治体より、医師に作成が依頼される「主治医の意見書」も必要になるが、病院によっては結果が出るまでおおよそ30〜60日かかる場合もあるという。

●親の介護施設えらびで聞いておきたい“5つの質問”

 親を介護施設に委ねようと考えるとき、果たして“どんな施設を選ぶべきか”という疑問も湧いてくる。本人の意向を汲み取りたい気持ちもありつつ、自分の親として考えると、やはりそれだけに任せるのも不安がつきまとう。

 とはいえ、何がふさわしいのかをみきわめるのも難しい問題であるが、ヒントとして本書はまず「優れた人材が多く働いている施設を選ぶことが絶対条件」だと指摘する。これを見定めるため、以下のような5つの質問を見学時などに聞くようすすめている。

1)そちらの施設では、要介護者何人に対してスタッフ1人を配置していますか?
2)そちらの施設では、介護福祉士の資格をお持ちの方は何人いますか?
3)ヘルパー2級資格(現行、介護職員初任者研修終了者)は何人ですか?
4)無資格の職員は、どのくらいいますか?
5)そちらの施設では、年間、どのくらいのボランティアの方が協力してくれていますか? どのような活動をされていますか?

 大切なのは、施設の外観など目に見える部分だけではなく、そこで働く“人”たちをみきわめる目。イメージに惑わされない意識も必要だ。

 生きていれば、不意の病や事故に見舞われる可能性もある。事前に入念な準備ができればよいが、家族に介護が必要になる場面はいつ何時ふりかかるか分からない。自分が年齢を重ねて、親世代もだんだんと年老いてきたとわずかでも実感しているなら、そろそろ考えておくべき時期かもしれない。

文=カネコシュウヘイ