「私だけがあなたの特別でいられたのに」百合マンガ『やがて君になる』最新刊が切なすぎて寝込むレベル!
更新日:2018/10/12
“好き”という感情がわからない小糸侑、他人の“好き”を受け容れられない先輩・七海燈子。女子高生の揺れ動く気持ちを丁寧にすくいとった百合マンガ『やがて君になる』の6巻が発売された。これがもう、読んだ人がバタバタと悶え倒れるほどの切なさ! ぜひとも心身ともに万全の状態で読んでほしい。
まずは、6巻にいたるまでの流れをおさらいしよう。小糸侑は、なりゆきで生徒会を手伝うことになった高校1年生。中学時代に仲の良かった男子に告白されたものの、“好き”という気持ちがわからずにいる。そんな中、侑は生徒会役員の上級生・七海燈子と知り合う。才色兼備の燈子はさまざまな人に告白されるが、相手の気持ちを受け容れられずにいた。侑は燈子に共感するが、燈子は「誰のことも特別に思わない」という侑に心を動かされる。「私、君のこと好きになりそう」──かくして侑と燈子の不思議な関係が始まることとなる。
物語が進むにつれ、燈子が他人の好意を拒絶する理由も明かされていく。実は彼女、7年前に姉を亡くしており、姉の代わりになろうとその影を追い続けてきた。その結果、たくさんの好意を向けられるようになったが、みんなが慕っているのは姉を演じるかりそめの自分にすぎないと思い込んでいる。「私のままの私になんの意味があるの」、そう醒めた顔でつぶやく燈子を見て、侑はそんな彼女を変えたいと思うようになる。折しも、高校では文化祭が始まる時期。生徒会メンバーが出演する「生徒会劇」を通じ、侑は燈子の心に変化をもたらそうとするが……?
そして迎えた6巻、ついに生徒会劇が幕を開ける。この劇において、燈子が演じるのは記憶を失った少女。クラスメイト、弟、同性の恋人がそれぞれ見舞いに訪れるが、昔の自分について聞いても3人の答えは全くかみ合わない。「誰からも好かれる人気者」「家族と距離を置く孤独な姉」「寂しがりやの弱虫」──果たして“本物の自分”はどれなのか。悩む少女に対し、侑が演じる看護師は「あなたはあなたにしかなれない」と諭す。やがて劇中で少女が出した答えは、姉の仮面をつけて生きる燈子の心をも強く揺さぶるものだった。
劇中の少女に背中を押されるように、燈子の胸中は劇を演じる前後で大きく変化した。それは「あの人を変えたい」と願っていた侑にとって、喜ばしいことだったはず。だがしかし……というのが6巻の読みどころ。変わっていく燈子を見て、ある決心を固めた侑。その思いがどんな波乱を巻き起こすか、ぜひその目で確かめてほしい。
思春期の少女は、刻一刻と変わっていく。人を好きになる、将来の夢を見つける、友達と衝突する、失恋する。そこまで大きなものでなくても変化のきっかけはいたるところにあり、心に波紋を広げていく。侑と燈子も、出会ってからの日々を通じて少しずつ変化している。さざ波のような変化も積み重なれば、大きなうねりとなる。それが一気に表出したのが、6巻と言えるだろう。7巻まで約半年待つのは正直キツイが、今はもう祈るように二人の行く末を見つめるしかない!
文=野本由起