地震・津波大国日本で、原発は本当に必要か!? 蓮池透氏の原発論
公開日:2018/10/10
2度の核爆弾の投下と原発事故の、放射性物質による大きな被害を受けたのは、日本だけだ。核物質の恐ろしさを誰よりもよく知っているはずなのに、原発の再稼働にやっきになる国と電力会社。お隣の台湾は、福島の事故と地震を鑑み、すでに原発廃止に踏み切った。
原発および電力会社の内情を知り尽くした蓮池透氏は、著書『告発 日本で原発を再稼働してはいけない三つの理由』(ビジネス社)で、原発の危険性を技術面から鋭く指摘している。拉致被害者・蓮池薫氏の兄として知られる透氏は、30年余りにわたり東京電力に勤務し、エンジニアとして福島第一原発の管理などに深く関わっていたのだ。
■原発を再稼働してはいけない三つの理由とは
蓮池氏が主張する、日本の原発が抱える大きな問題点は、次の3点だ。
1.核のゴミ(高レベル放射性廃棄物)の最終処分場がない
2.「世界一厳しい基準」は大嘘である
3.避難計画の不備は人命軽視である
この3つのどれかひとつでも当てはまれば、原発を動かすべきではないと蓮池氏は述べている。それがすべてそろっている日本は、当然、原発を稼働させる資格がないという。
最終処分場が見つからない状況は誰でも知っている。福島第一原発の汚染水の処理すらままならないのだから。家の隣に保育所を作ることにさえ反対する日本人が、自分の町に核の処分場を受け入れるとは到底思えない。
次の「世界一厳しい基準」は、嘘だったという。その理由を、氏が技術面から詳しく述べている。原子力規制委員会が作成した「新基準」は穴だらけであり、日本より安全に配慮した原発は、いくつもあるそうだ。
今の避難計画が机上の論理であることも関係者の多くが感じていることだろう。氏が指摘するのは、避難計画が、道路も港湾も完全に機能していることが前提になっている点だ。原発事故が起こるのは、災害時がほとんどだろう。地震、津波、火山噴火。その時、道路や港湾などが機能している保証はまったくないというのだ。
不備はまだまだあるそうなので、詳しくは、著書を参考にしてほしい。
■今こそ、日本のエネルギーをどうするのか、真剣に考える時
本当に、原発を再稼働していいのだろうか。蓮池氏は、電力自由化を推し進めるためには、東京電力の分社化と中立・公正な送配電会社の設立が不可欠だという。さらに利権の巣窟である「原子力ムラ」の解体も必要だそうだ。原子力ムラとは、族議員と呼ばれる政治家、関係閣僚、電力業界、原子力事業者、一部の学者などの利権を手にしている人たちのことだ。
蓮池氏は彼らを「反社会的集団」とまで言い切っている。日本のエネルギーをどう賄うのか。今こそ、原発事故を痛いが貴重な教訓と捉え、氏が告発した原発と電力会社の内情も知ったうえで、エネルギー問題について真剣に考えるときだろう。
文=今眞人