高校教師の人気ユーチューバーが書いた社会人にも役立つ「新感覚の世界史の教科書」
公開日:2018/10/11
歴史が苦手な人は、学生時代の世界史=暗記科目と割り切って学習してきたのではないだろうか。教科書を読んでみても、国をまたいで時代のあちこちに飛ぶ解説では理解できず、なのに試験のために年号と出来事の羅列をしっかり結びつけて暗記。思い出しただけでも、もう辟易…そんな残念な世界史との出会い方をしてしまった人に、ぜひ読んでほしい本がある。
『一度読んだら絶対に忘れない世界史の教科書』(山﨑圭一/SBクリエイティブ)の本文に年号は出てこない。世界史を「1つのストーリー」として集約し、まるで壮大な物語を読んでいるかのような気分になりながらも、かつ時代ごとの出来事のポイントはしっかり押さえることができる「新感覚の世界史の教科書」なのである。
本書と従来の教科書との一番大きな違いは「世界史を数珠つなぎ」にしていることだ。現行の教科書「世界史B」の学習項目の順番を例として挙げている。ヨーロッパの国家のなりたちの途中にインダス文明の解説が入ったり、中国の歴史をこのまま辿ると思ったら、いきなり中東のイスラームの成立に突入したりと、教科書の意図するところは別にあるとしても、この順番こそが分かりにくくしていると指摘している。著者は「あっちこっちに飛んでいるため、教科書をはじめから読んでも“全体像”がいっこうに頭に浮かびません」と語っている。
世界史を理解する第一歩は、暗記は一旦横に置いておき、まずは全体像をつかむことだ。それが「数珠つなぎ」にして見ていくということである。だから、この段階で年号を覚える必要はない。ストーリーに沿ってどんなことが起きたのかを順に追っていくことこそが、一番頭に入りやすいのだ。
「数珠つなぎ」である本書の構成は、第1章のヨーロッパに始まり、あとは中東、インド、中国と、大航海時代前まで、国ごとに歴史を追っていく。第5章で「大航海時代やヨーロッパ諸国の海外進出」以後、章ごとに「革命の時代」「帝国主義と世界大戦の時代」「近代の中東・インド」「近代の中国」終章「現代の世界」へと続き、世界史をスッキリと整理。どの章も最初に大まかなあらすじがあり、内容もポイントを取り上げて平易な言葉で解説している。また、重要な文章は線が入っているため、学習者にとっては歴史のとらえ方・考え方として大いに参考となるだろう。暗記するときだけではなく、記述問題にも役立つはずだ。
年号については巻末付録の「文化史と世界史年表」でフォローされている。年表には本書の参照ページもセットで書かれているので、復習もやりやすい。受験生には世界史強化のきっかけになるだろう。
著者は公立高校の教師を続ける一方で、世界史だけではなく、日本史、地理などの授業の動画配信を行っている。受験生や学びなおし中の社会人から「神授業」と支持を受け、チャンネル登録者数も2万5千人を超える人気ユーチューバーの顔も持つ。
世界史は学習範囲が広いので得意、不得意な時代や国が、人によって千差万別だ。本書で流れをつかむことによって、バラバラ、あやふやだった知識が繋がっていくといううれしい体験ができるのではないだろうか。それは学生だけではなく、大人も知識欲が刺激され、新たな教養を身に着けることができるだろう。もう一度、新たな入口から世界史をのぞいてみよう。
文=小林みさえ