日本で生きる外国人たちの思いとは? アフリカ人の少年が描く日本での成長記
公開日:2018/10/15
テニスの最高峰「グランドスラム」の一角である「全米オープン」の女子シングルスで、日本人選手として史上初めて大坂なおみ選手が優勝した。ちなみにこの大坂選手、ハイチ系アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれたハーフである。このように、最近スポーツなどで両親のどちらかが外国人というプレイヤーの活躍が目立つ。大坂選手のように青春時代をアメリカで過ごしたケースもあれば、ずっと日本で暮らしてきたケースもあろう。日本ではその容姿ゆえ、外国人と思われることも多かったはずだ。彼らはどのように日本で生きてきたのか。『まんが アフリカ少年が日本で育った結果』(星野ルネ/毎日新聞出版)は、そういった疑問に漫画形式で分かりやすく答えてくれる。
作者・星野ルネ氏はカメルーン出身のアフリカ人である。彼が4歳に満たない頃、両親の結婚を機に日本へやって来たという。……そうである。作者は確かに日本人の父とアフリカ人の母を持つが、実はハーフではなかった。作品には登場しないがアフリカ人の父親が別にいるのである。彼の弟妹たちと自分の肌の色があまりに違うため母に確認したところ、アッサリ事実が判明したのだ。アフリカでは異父(母)兄弟は珍しくないので、母は気にもしてなかったらしい。それでも作者は事実を知るまで思い悩んでおり、日本人的精神は育まれていることが分かる。
そして学校では、その容姿から注目を集めることに。この点に関して、ちょっと面白いエピソードが語られている。それは作者を「天敵」として敵視する意外な存在がいたことだ。どのクラスにもひとりやふたりいたであろう、「目立ちたがり屋」がそれである。彼らは目立つために日夜努力を欠かさないのに、外国人というだけで注目されてしまう作者が許せなかったのだという。しかしながら、そんな作者をさらに上回る「注目の的」が存在した。それは彼の「母親」だ。生粋のカメルーン人である母親は、彼の高校入学式になんとド派手な「民族衣装」で着飾って現れたというのだ! その後も作者の「弁当」にピリ辛スープのアフリカメニューを用意するなど、学校生活で彼が目立ってしまった理由は母親にもあるといって過言ではあるまい。
さらに日本で作者に襲いくるのが、見た目から来る「先入観」である。例えば日本人は英語が「共通語」という認識なので、外見から作者もよく英語で話しかけられたと語る。しかしアフリカはフランス語圏であり、彼もまた部族語とフランス語は理解できるが英語は弱かったのだ。むしろ日本語のほうがペラペラなのだが、必死に英語で話しかけてくる人につい英語で対応してしまうこともあるという。その結果、一念発起した作者は英会話スクールに通いはじめ、今では外国人たちと談笑できるほどになったのである。またアフリカ人は運動能力が高いという「先入観」もあるが、インドア派の彼は決してそんなことはなく、運動会などで大変な思いをしたのだとか。
作者の父親は研究者であったが、ある日、彼は父親に「日本文化とは何か」と尋ねられた。「日本に古来より残る言葉や風習など」という彼に対し「文化とは人間そのもの」であると答える父。作者はその考えに感銘を受け、この漫画も「日本文化の一部」になり得るかもしれないと語る。出自など大した問題ではなく、日本において何を成していくのか。それが一番重要であることは、大坂選手たちの活躍を見れば一目瞭然ではないだろうか。
文=木谷誠