コンビニ店長残酷物語……便利さの裏にある、知られざる過酷な労働現場
公開日:2018/10/17
YouTubeやニコニコ動画で配信されている「衝撃!コンビニの現場」は、コンビニ加盟店オーナーが現場で起きた労働問題、契約問題を取り上げるニュースチャンネル。番組からは、本部からノルマを課せられたり、過重労働を強いられたりとブラックなコンビニ経営の実態が見えてきます。
その番組が『コンビニオーナーになってはいけない 便利さの裏側に隠された不都合な真実』(コンビニ加盟店ユニオン:著、北健一:著/旬報社)となって書籍化。「コンビニ加盟店ユニオン」は、全国の約150店舗のコンビニ加盟店オーナーが加入する団体で、セブン-イレブンやファミリーマートなどの本部と団体交渉を行っています。
本書からは、コンビニの便利さの犠牲になるオーナーと従業員の悲痛な叫びが聞こえてきます。
■あまりに身勝手な本部の言動
篠原大典さんは2001年から広島で某大手コンビニチェーンの加盟店オーナーを夫婦で営んでいました。
本部からはOFC(オペレーションフィールドカウンセラー)という店舗指導員がつき、その上にDM(ディレクトリマネージャー)がいました。
山奥のインターチェンジ付近にある篠原さんの店舗を訪れたDMは、「売上が低い店だ。売上が上がるまで子供は作るな」と信じられないことを言い始めます。さらにOFCまでパート従業員に対して「ケーキ、おせちの予約を取るように」と自腹買い取りを強要し、拒否したパート従業員を篠原さんの断りなく解雇してしまいました。
場所柄、駐車場を利用するのはトラックや大型トレーラーが多く、道路脇の側溝が割れたり、大型看板が破損したりと設備不良が多く、修理依頼が4回を超えると本部から修理に来なくなりました。毎月本部に保険料を収めていたにもかかわらずです。しかたなく自腹で修理費を立て替えて店を続けました。
度重なる問題で店舗移転をDMに相談しても「文句があるなら辞めればいい」という態度でまともに取り合おうとしません。OFCからも「契約更新しませんよ」と脅され泣き寝入り。結局は15年で一方的に契約は解除されてしまったといいます。
■コンビニ業界の搾取構造
コンビニチェーンでは、「コンビニ会計」という独自の会計方式を用いています。売上総利益(粗利)のうち60%を本部がロイヤリティで取り、40%が加盟店の利益になります。ここで数字以上に利益が本部に搾取されているといいます。
例として、定価100円(原価70円)のおにぎりを10個仕入れ、8個売れ、2個が廃棄になったとします。
売上は100×8=800円 売上原価は70×10=700円 粗利は800円-700円=100円
粗利の取り分は、本部が60円、加盟店40円
通常の会計はこうなるはずですが、商品の廃棄は加盟店の負担になり、本部は売れた分の原価しか見ないという独特の会計を行います。
売上は100×8=800円 売上原価は70×8=560円 粗利は800円-560円=240円
粗利の取り分は、本部が144円、加盟店96円
ただし廃棄原価70×2=140円 加盟店96円-140円=-44円
と、コンビニ会計では、本来なら40円の利益が得られるはずがマイナスになってしまいます。
それなら廃棄を抑えるために在庫を少なくし、賞味期限が迫った商品は安くして見切り販売をすればいいと考えますが、本部からは「機会損失を避けるために○百万円までは仕入れるように」と強制され、見切り販売も快く思われず、契約更新時に問題にされるといいます。
本書では、こうした問題を浮き彫りにし、オーナーと本部の関係改善を訴えています。危機的状況に陥っているコンビニは全国で数多く、いつ潰れてもおかしくありません。
これからも便利なコンビニを末永く利用するにはどうしたらいいのか。コンビニを利用する私たちも他人事ではないかもしれません。
文=愛咲優詩