「うつ病」とどう違う? 誤解されがちな「適応障害」のこと
公開日:2018/10/19
「適応障害」。言葉は聞いたことがあっても、その説明を正確にできる方は少ないのではないだろうか? うつ病とは違うの? 何が原因なの……? たくさんの「?」を、分かりやすくイラスト図解した一冊が『新版 適応障害のことがよくわかる本』(貝谷久宣:監修/講談社)だ。
適応障害は、主に心因的理由、つまりストレスが原因で症状が現れる。病気と健康の境目にある「状態」を指した病名だ。環境の変化に順応できず、抑うつや不安感などの精神症状をはじめ、心身に様々な症状が現れ、「日常生活に支障を来すこころの病」だという。
うつ病や不安症と何が異なるのかというと、そういった精神疾患ほどではない「状態」を表す点。症状が軽く、比較的早く治ることが多いそうだが、症状が重くなり、うつ病などの、他の病気に移行することもあるので、油断は大敵。適応障害(「うつ状態」といった診断をなされることもある)の段階で対策を立てることが、他の病気を防ぐことになるそうだ。
「もしかして私、適応障害かも?」と不安に感じている方は、本書をお手に取ってほしい。本書では、そのきっかけとなるストレス(結婚、進学、離婚、転職、重病が判明、家族との死別などの喪失体験、定年後に夫がずっと家にいる、災害等々、様々にある)や、具体的な不調について、その対処法などを、イラストと共に分かりやすく教えてくれている。
治療方針としては、まずストレスの原因を突きとめること。
その後、精神療法や薬物療法(抑うつ、不安を軽減する。不眠の改善、気持ちの安定にもつながる)を二本柱として、規則正しい生活を心がける生活療法がある。カウンセラーとのカウンセリングだけで回復する人もいる。なにより、適応障害の治療には、本人の「よくなりたい」という強い気持ちが大切だという。
また、本書では家族が適応障害だった場合、周囲はどのように対処したらいいのかにも触れられている。
「寝てばっかりいて、怠けているのか」「また仕事を休んで、サボりだな」など、叱責することは逆効果に。本人でさえも、適応障害だと気づいておらず、「頑張りたいのに、頑張れない」ということで悩んでいるかもしれない。周囲からの厳しい言葉は、この場合、ますます病状を悪化させることになる。
適応障害の治療には、「休ませる」ことが大切。よって周囲も「激励」や「忠告」をするよりも、相手の「こころのエネルギー」を回復させるための「休養」を勧めたほうがよい。
ただし、休ませるのは「こころ」のみ。運動不足になってしまうことを避けたいので「適度に身体を動かす」のも必要だとか。周囲の人は、部屋に引きこもりがちになる家族を、適度な運動に誘ってみるのもいいかもしれない(無理強いはしないように……!)。
最近、大きな環境の変化があってから、どうもやる気が出なかったり、気分が優れず、悩んでいたりしたら……。本書は、あなたの不安を払拭し、新しい一歩を踏み出すことを、応援してくれる一冊になるのではないだろうか。
文=雨野裾