女性が注文した焼き鳥が、謎を解く最大のカギ! 食事からターゲットの素性を探る探偵
更新日:2018/10/22
「食事は嘘をつかない」とは、『乱歩の美食』(楠本 哲/日本文芸社)の主人公・宇田川乱歩の台詞だ。言われてみれば確かにそう思える。「食の好み」は、その人らしさを表す一種のアイデンティティだと言っても過言ではないだろう。
美食家の探偵・宇田川乱歩。彼は、浮気調査や素性調査、人探し、その探偵業における全てを「食」を通して見極める。ターゲットを尾行して飲食店に入り、ターゲットが頼んだものと同じメニューを注文する。そしてその料理から事件の背後にあるものを推理するという、まったく新しいグルメ漫画だ。
その斬新さとおもしろさから人気を博した1巻に続き、2巻でもさまざまな美食家と彼らからの依頼、そして数多くの「美味しいモノ」が登場する。
第10話「焼き鳥in渋谷」は、生粋の“塩派”として意気投合した焼き鳥好きカップルの彼氏からの依頼が中心。「彼女がプロポーズの返事を保留している理由を知りたい」という内容だ。乱歩が彼女を尾行すると、彼女はふたりが好きだという渋谷の焼鳥屋へと消えていく。
とり刺し、つくね、ひな皮、東京軍鶏、若鶏ねぎま、手羽先…。そのメニュー名を聞くだけでよだれが止まらないような品々が漫画で描かれる。しかし、その次に彼女が頼んだものが、まさかの…。というストーリー展開だ。美食家ともなれば、「食の好み」によるすれ違いや葛藤もあるのかもしれない。
他にも、本書に収録されている11話~18話では、「お好み焼きin神田」「餃子in江古田」「いわしin大崎」「韓国料理in新大久保」「へぎそばin末広町」などなど、美食家たちをも唸らせる東京のグルメが数多く登場する。
本書はグルメ漫画という読みものとしておもしろいだけに留まらず、東京グルメのガイドブックとしても大いに活用できそうだ。グルメの歴史や食通の食べ方、味わうポイントを楽しく学びながら、この秋は乱歩と一緒に東京のグルメを散策してみてはいかがだろうか。
文=K(稲)