麻薬犬は上司よりもエラい!『ハコヅメ 交番女子の逆襲』でわかった“お巡りさんの実態”
更新日:2018/10/22
交番のお巡りさんが、普段どんなお仕事をしているかと聞かれたら、パトロール、道案内、落し物の処理などなど、身近な問題がまっさきに思い浮かぶのではないでしょうか。恥ずかしながら筆者はそうでした。ところが、それは一般人から見えている部分に過ぎません! 交番のお巡りさんは、実にさまざまな業務をこなしていたのです。
『ハコヅメ 交番女子の逆襲』(講談社)は、そんな交番女子の日常をギャグ満載で描いた漫画です。
作者の泰三子先生は、なんと元警察官。どういう経緯で漫画家になったのかもものすごく気になりますが、とにかく、泰先生が実際に見てきた警察官のリアルなエピソードが満載です。
新任警察官の川合麻依が、交番(通称“ハコ”)に配属されるところから物語は始まります。そこで出会ったのが指導員の藤聖子部長。刑事課のエースだった彼女は、後輩へのパワハラでハコへ飛ばされてきました。
藤部長のもと、警察官の仕事に邁進していく麻依ですが、仕事内容はとにかく激務。街のパトロールに、交通違反の取り締まり、山中で行方不明になった老人を探しに山狩りに駆り出されることもあれば、痴漢で捕まった犯人の取り調べもあったりと、睡眠も食事もまともに取れない日が続くことが日常茶飯事。
そんなとき麻依たちは仮眠室で休憩をとるわけですが、二段ベッドの上段は老朽化で怖くて使えないということで、下段で女3人ギュウギュウになって眠ります。部活みたいですね。
このような、警察官にしかわからないあるあるネタも、ふんだんに出てきます。
たとえば、1巻7話「拝啓お犬様」の回では、山で行方不明になった老人を探すため、麻依たちも捜索隊として出動。そこで警察犬とともに山狩りをするのですが、警察犬はその能力の高さゆえ、非常にデリケート。三半規管を刺激する大きな物音はNG。ちょっとの臭気も捜索の邪魔になります。警察官にとって、上司よりも気を使わないといけない存在なのだそうです。
ほかにも捜索中、不法に投棄された家具や、中身だけ抜かれた金庫の残骸を発見したり、行方不明者を探すボランティア民間人が明らかな定員オーバーでトラックに乗っているのを目撃したり、警察官として動くかどうかを葛藤するシーンも。本当にこういうことがあるんでしょうね…。
また、警察は人が考えたくないことを想定して動くのが仕事であるがゆえ、基本的には木の上か、崖下を中心に捜索するそうです。なるほど~と思うシーンもたくさんあって、思いがけず勉強になります。
とはいえ、いつもこんな愉快(?)な日常というわけではありません。警察官である以上、目を背けたくなるような事件にもたくさん出くわします。
3巻では、未成年の少女ばかりを狙った暴行事件の捜査に、麻依たちが加わるという話が描かれます。
実際の現場ではどのような捜査が行われているのか、そのとき被害者がどんな状況に置かれるのか…胸が締め付けられるような場面も多々ありますが、麻依たち交番女子は現実から目をそらすことなく犯人逮捕に奔走するのです。
小さな事件も大きな事件も、同じように真正面からぶつかっていく麻依。
このほか、警察は当直で何をしているのか、UFOを見たという通報の対処法、格闘訓練による弊害などなど、知られざる警察官の日常が盛りだくさん。
待望の第4巻は、10月23日に発売です。お仕事漫画好きにオススメの作品です。
文=島野美穂(清談社)