誰もが気になる“怪しい現場”の実態。インチキ占い師の“矛盾”を暴いた記録
公開日:2018/10/23
世の中には数多の“怪しい現場”がある。宝石を売りつけるキャッチやマルチ商法の勧誘現場、果ては、老若男女が全裸でバカンスを楽しむ異国のヌーディスト・ビーチなど、きな臭いスポットを探せば枚挙にいとまがない。
ただ、好奇心はあるものの不安が先行して、そういった現場にはなかなか近付けないというのも世の常。しかし、あえてさまざまな“怪しい現場”に体当たりで挑み、生々しく実態をレポートした本がある。月刊誌『裏モノJAPAN』(鉄人社)の名物編集者である仙頭正教さんの記録をまとめた『怪しい現場 潜入したらこうなった』(鉄人社)である。
現場の写真を織り交ぜて伝えられる22篇のレポートは、どれも鬼気迫るものばかりで、自分がさもそこにいるかのような疑似体験をさせてくれる。
◎占い師は果たして“人を見かけで判断する”のか?
数あるレポートの中から、著者が街中の“小悪党”と対峙したエピソードを紹介していきたい。相手となったのは、東京で有名な手相占い師。「手相なんてもんはタダの手のシワであって、未来など絶対に分かるわけない」と綴る著者は、インチキを暴くべく以下の方法で検証を試みた。
(1)まず、協力者のカワイイ女性が占いへ向かう
(2)翌週、同じ彼女が特殊メイクでブサイクな顔になり、再び足を運ぶ
人は見かけで判断するものであり、それは占いでも同じこと。手のシワに変化はないはずであり、1回目と2回目の予言が同じでなければおかしいというのが、この検証の焦点であった。
◎カワイイ子には「強姦されておしまい」と言い付ける
ある日の午後から、1回目の検証がスタート。著者は、協力者の女性・ユカ(23歳)に鑑定料の4500円を渡し、「じゃあ今日は普通に今のままの素顔で行ってきて」と占い師のもとへ向かわせた。
後々の報告によれば、最初の20分くらいは生年月日による運勢鑑定が行われ、「あなたはガンコもん」「黙って聞いているようだけど、内心まったく無視している」「すぐに人に頼る」「衝動買いの気がある」と、誰にでも当てはまるようなダメ出しを行ってきたようだ。
そこからようやく手相占いが始まるわけだが、その会話はまるで探りを入れるようなものばかり。「18~22歳までに出会った人がいたでしょ?」と聞かれてユカが「ハイ」「たまに連絡取っています」と答えると、返す刀で「その人が運命の人だだから結婚しなさい」と言い放つ占い師。
挙げ句の果てに「今後の出会いは全部ダメ」「合コンや飲み会の出会いは、強姦されてオシマイ」とボロクソな言葉を吐きかけたという。
◎特殊メイクでブサイクに。果たして気になる鑑定結果は?
2回目の検証は、ちょうど1週間後に行われた。前週、占い師のもとへ向かった“カワイイ”ユカの姿は一変。はれぼったい目にパサついた髪、安っぽいメガネをかけたりと特殊メイクを駆使した万全な準備のもと、今度は著者が付き添う形で再び“小悪党”と対峙することになった。
相変わらずのありきたりなダメ出しが15分続いたあと、核心である手相占いが始まった。「18~22歳にちょこっと片思いの線が出ているんだけど」と、瞬間的に1週間前の鑑定結果と合致するのかと思いきや、占い師は続けざまに「この線は、鼻くそね」という言葉をユカへと吐きかけた。
さらに、出会いを求めるなら「合コン、飲み会に行くしかないよ」とたたみかけてくるババア。前回は18~22歳に出会った人が「運命の人」だと話し、しまいには「合コンや飲み会の出会いは、強姦されてオシマイ」と言ったことをふまえると、明らかな矛盾である。そこでいよいよ、著者は攻勢に出た。
◎矛盾を突きつけると「言ってねーから」と開き直った占い師
占い師がひとしきり話し終えたあと、著者はユカの素顔写真を見せた。「先週、こちらで手相を見てもらった子なんですが、この彼女と、同一人物なんですよ」と語りかけると、現場には少しばかりの沈黙が流れた。
その後、著者が「前回は、18~22歳の間に出会った人が運命の人だと言われたんですよ」と突きつけると、少し黙り込んだあと「だからさっき、過去に好きになった人はいなかったか訊いたじゃないの?」と食い下がる占い師。しまいには1回目の鑑定と同じく、その時期に知り合った人がいると素直にユカが打ち明けると「じゃあ、その人でいいじゃないの。アンタらもヘンなこと言うわね!」と開き直ってきた。
さらに、もう一つの重要な矛盾であった“強姦”発言について尋ねると「言ってねーから」「絶対ねーから、ねーから、ねーから」と否定し続ける始末。やがて、オッサンのスタッフが奥から出てくる一悶着もありつつ、最後は「あー、うるさいうるさい。もう頭痛くなってきた。お金返すんで、帰ってちょうだい」と占い師はさじを投げたという。
さて、今回紹介したエピソードは数あるレポートのうちのたった一つ。本書ではこの他にも、時にはバカバカしく、時にはシリアスなものまで、さまざまな“怪しい現場”の実態が生々しくまとめられている。著者の体を張った潜入劇を、ぜひとも味わってもらいたい。
文=カネコシュウヘイ