ベテラン漫画家が、トルコにハマった結果…トルコを味わい尽くせ!
更新日:2018/10/30
“グルメ”に関心をお持ちのあなたは、「世界三大料理」ってどこの料理か、ご存じですか?私は知りませんでした。「中華料理」「フランス料理」と並んで、「トルコ料理」が世界三大料理のひとつだということを…。『トルコで私も考えた トルコ料理屋編』(高橋由佳利/集英社)には、そのトルコ料理が余すところなく紹介されています。
■ベテラン漫画家がトルコに入れ込み、トルコ料理屋を開店
本書の作者、高橋由佳利さんが漫画家としてデビューしたのは1978年。『りぼん』『マーガレット』『ヤングユー』などに連載を持ち、「なみだの陸上部」に代表される、高い画力としっかりしたストーリー展開の少女漫画は、大人気を博しました。そんな高橋さんが、友人たちから薦められて初めてトルコを旅行したのが1992年。美しい街並みと親日のトルコ人、そしておいしいトルコ料理に魅了された高橋さんは、その後トルコに語学留学し、トルコ人と結婚。さらにトルコに家を買い、息子が誕生し…と、トルコと日本を行き来しながら、トルコとの縁を深めていきます。そんな様子が描かれたエッセイ漫画『トルコで私も考えた』はシリーズ化され、20年を超えるロングセラーとなっています。
そんな高橋さん一家が日本へ転居し、2010年から神戸でトルコ料理屋を開店することに。本書では、トルコ料理屋「ケナン(息子の名前)」を開店して営業する様子がユーモアたっぷりに描かれています。
■新メニューに、本場仕込みの思い出の味を
トルコ料理屋は、味わい深いトルコ料理と誠実な接客で、徐々にお客さんを増やしていきます。開店から半年経ったころ、新メニューを検討し始めた夫に高橋さんが提案したのは、夫の思い出の料理「マントゥ(トルコ風水餃子)」でした。トルコ国内でも、地方によって大きさや作り方がさまざまなマントゥは、夫の地元である、中央トルコのカイセリ地方が本場だったのです。「そりゃ俺だってメニュー化したいけど、手間がかかるし、メニュー化は難しい」と渋る夫に対し、高橋さんは自らマントゥ作りを志願し、早速トルコに飛び、義母から本場仕込みのマントゥ作りを伝授してもらいます。目にも止まらぬ速さで皮を伸ばしていくマントゥ歴60年の義母から教わったレシピは、無事料理屋のメニューになるのか…? 巻末にはそのレシピも紹介されていますので、実際に作って味わってみるのもよいでしょう。
■トルコ料理を味わいながら…
本書は、トルコ料理やスイーツの数々がレシピ付きで紹介されており、食欲だけでなく創作欲も刺激されるグルメ漫画です。家族のつながりや客人へのおもてなしを大切にするトルコ人のメンタリティや、その背景にある宗教や生活事情など、トルコにまつわるさまざまな内容がふんだんに盛り込まれており、異文化理解も深まるでしょう。
また、紹介したマントゥは、似ている料理が世界各国にあり(中国の水餃子や、ロシアのペリメニ、イタリアのラビオリなど)、食文化の歴史やシルクロードに思いを馳せるのも楽しそうです。なお、「ケナン」は惜しまれながら閉店しましたが、本シリーズの連載は10月23日発売の『オフィスユー』で再開。こちらも楽しみです。
文=水野さちえ