【過去の偉人たちに聞く】ノーベル賞って、どうやったら受賞できるの?
公開日:2018/10/25
本庶佑氏のノーベル賞受賞に国内が沸いている。近年続く日本人のノーベル賞受賞に、「大人になったらなりたい職業」男子の部で、「科学者」がメキメキ順位を上げているという調べもある。
科学者になるのは大変な努力が必要だろうが、ノーベル賞受賞となると、もはやその方策は凡人にはわかり得ない。餅は餅屋。ノーベル賞受賞者に教えを請えば良い。
ノーベル賞に憧れる子どもにお薦めしたい本がある。『ノーベル賞受賞者が教えるノーベル賞をとる方法』(バリー・マーシャル:著、かとうりつこ:訳/WAVE出版)は、サイエンス好きで、将来ノーベル賞をとれる科学者になりたいと願っている少女マリが、とある秘密結社の会合を覗いてしまったことから、タイムトラベルをしつつ過去のノーベル賞受賞者たちに会い、教えを受けていく物語。
イラスト入りでやさしい語り口から、低学年でも保護者のサポートがあれば読めそうだ。登場人物は次の豪華なラインナップ。マリと読者の目の前に現れて、語りかけてくれる。
マリがタイム・マシンで最初に訪れるのは、1905年のスイス。あかんべえの顔で有名なアインシュタインだ。低学年の子どもに相対性理論を説明するのは、簡単ではないかもしれない。しかし、本書ではマリにこのように説明する。
机の上から紙の山を床に払い落とし、空いた場所にコーヒーカップを置いた対面のアインシュタインは、マリにこう言う。
「さあ、コーヒーカップは、机の右側にあるか? 左側にあるか? どっちだい?」
マリから見ると右側だが、「こっち側にきてごらん」と言ったアインシュタインから見ると左側にある。
これに続き、光のスピードだけは秒速30万キロメートルと変わらないこと、エネルギーと質量は元は同じものだということ、未来へ旅することは簡単であること、などを語って聞かせる。
そして、ノーベル賞受賞を目指すマリに、次のようにアドバイスする。
「きみにはたっぷり時間がある。必要なだけ時間をかけなさい。いつか答えを見つけられたら、きっとそれはシンプルで美しいはずだ。宇宙はシンプルにできている」
本書の各項では、ストーリーの後に実験のページがある。アインシュタインの項では「光の速度をはかろう」。電子レンジのマイクロ波とチョコレートを使って、手軽に光の速度をはかる実験の手順が、穴あき問題形式で書かれている。相対性理論の学びの定着にピッタリの内容だ。
本書の著者は、胃がんの予防に大きな効果を挙げた、ピロリ菌発見でノーベル賞を受賞したバリー・マーシャル氏。ノーベル賞受賞者の視点で、全話がわかりやすくまとめられている。
巻末には、子どもたちに向けたマーシャル氏の言葉が掲載されている。いわく、「ちょっと寝ると、集中力が高まる」。世の子どもたちは忙しい。ノーベル賞受賞を目指す子どもなら、なおさらだ。時には、ちょっと寝て、集中力を高めることで、難しい問題がすらっと解け、自信に繋がることがあるかもしれない。
文=ルートつつみ