人のふり見て我がふり直せ! 電車の中で「イラッ!」とする行動
公開日:2018/10/26
電車を利用しているとき、他人の行動が気に障ったことはないだろうか。昨今はスマホを弄っている人が多く、昭和の頃によくいた新聞を広げて読みふけるオジサンたちは少なくなったが、逆に大きく足を広げて座ったり、平気で電話を掛けたりする不心得者などは多く見るようになった。
本書『電車でNO!! マナーの悪い乗客たち』(河村要/幻冬舎)は、自らを「還暦を迎え5年目になる、ごく普通のゴマ塩頭のオヤジ」と称する著者・河村要氏の実体験をもとに、現代社会のマナー向上を考える一冊である。こう書くと抹香臭いと思われるかもしれないが、身構える必要はない。著者自身によるマナー違反のシチュエーションを描き出したイラストを眺めつつ、「こんな場面あるある!」と思いながら読んでいける内容だ。
冒頭に紹介されるのが、ロングシートにおける座りかたのマナー。ちなみにロングシートとは通勤電車で多く採用されている、窓に対し背を向けて座る長いベンチ状の座席である。まずここで思い浮かべるマナー違反といえば、隣に荷物を置いてしまい2人分の座席を占拠することだろう。普段から電車を利用していれば常識として荷物は膝に抱えるだろうが、そうではないのか、気にせず置いてしまっている人も少なくないようだ。
しかし、乗り慣れた人でもうっかりやってしまうのが、スーツやスカートのすそ、またはバッグのベルトやキーチェーンを隣の席に垂らしてしまうこと。著者いわく「この人達は自分の一部分が隣の席をほんの少し占有していること気づいていないのです。ましてや、この行為自体が無意識なだけにその空いている席に座ろうとするとなかなか厄介なのです」とのこと。言われてみれば私自身、リュックのベルトが隣席に垂れていたかもと思い当たってしまう。
電車内でのリュックといえば、最近では身体の前に抱えるというのが常識と思われるが、いまだに混雑した車内でも背負っている人を見かける。はたから見ていると邪魔だというのは分かりやすいのだが、背負った本人は全く気付かない様子。著者は「そのリュックに当たろうものなら、不機嫌な目で見られ、そして謝る人はまずいない」という。自分の荷物が邪魔だったと気付くようなら、初めから手に提げるか身体の前に抱えているからだ。
こうして悪いマナー例ばかり書いていると、私自身まで小言を並べているような気分になってきた。しかし、本書はただ苦言を呈しているばかりではない。例えば席を譲る行為で、著者が目撃した印象的なエピソードを紹介したい。
【ある日、目の不自由な若者がお母さんらしき婦人に付き添われて乗車してきました。それに気づいた若い女性が笑顔でそのお母さんらしき婦人に「どうぞ、座りませんか?」と立ち上がって席を譲ったのです。そうしたらどうでしょう、その女性の隣に座って、その様子を見ていたスーツ姿の若い男性もつられるように席を空けたのです】
優先席ならば当然のことだろうが、一般席でも同じことができるかといわれると、私自身は少々自信がない。特にやたらと疲れているときなどは、見て見ぬフリをするのでは、などと思ってしまうのだ。思いやりのある行動を自然に取るということは簡単ではないだろうが、そうありたいと心がけることは大事だろう。
他人のマナーを論じるのは簡単なことだ。上から目線であれが悪いこれが悪いといっていれば、楽に正義感を満たすことができる。だが、それでは何も変わらないのではないだろうか。「人の振り見て我が振り直せ」というように、今こそ電車内でのマナーから自分自身の行動を振り返ってみてはどうだろうか。もっとも私自身、反省すべきことが多すぎて悶絶しているところだが……。
文=木谷誠