JKビジネスは“裏オプション”込みで年間799億円の経済効果。闇に蠢く地下経済の実態
更新日:2018/10/31
光が当たれば影ができるように、世の中には“オモテ”と“ウラ”が存在する。私たちが買い物し、ご飯を食べ、レジャースポットでお金を落とす当たり前の消費行動を“オモテの経済”と表現するならば、ヤクザや不良たちが暗躍する世界で動く金は“ウラの経済”と表現できるだろう。
『日本の「地下経済」最新白書』(門倉貴史/SBクリエイティブ)では、普通に生きていれば縁のないウラの経済を「地下経済」と表現し、私たちの隣にひっそり存在する黒いビジネスを徹底解説している。著者は「ホンマでっか!?TV」などの出演でおなじみの門倉貴史先生だ。
■東京オリンピックの経済効果をしのぐ地下経済の規模
日本はGDP世界第3位の経済大国。内閣府によると、その額は2017年度で530兆円以上! …すごすぎてよく分からない。しかし、この巨大な額には反映されていない経済活動がある。それが地下経済だ。
地下経済を簡単に表現すると、GDPに反映されない経済活動のこと。つまり犯罪などによって得た“オモテに出てこないお金”だ。門倉先生の試算によると、その額は2017年度で26.5兆円! 同年度の全公務員の人件費26.6兆円に匹敵する額だ。
そして今、地下経済が大幅に伸びている地域がある。東京だ。2020年の東京オリンピックを控え、違法薬物、性風俗、違法カジノ、脱税など、闇の勢力たちがウラで経済活動を膨張させているという。その額は4兆円以上! 確か東京オリンピックの経済効果が約3兆円だったような…。
■女子高生にラップ越しキス…JKビジネスのオプション稼業
「地下経済」や「黒いビジネス」と聞いて、真っ先に思い浮かぶのが「性産業」だろう。門倉先生の試算によると、AVの市場規模が年間1037億円、ソープランドが年間9134億円。そしてデリヘルは年間1兆8481億円。これは2013年度の鳥取県の経済規模(県内総生産)1兆7677億円をしのぐ額だ。それだけ性産業は巨大なマーケットなのだ。
その中でもどっぷり地下経済にもぐりこみ、社会問題化しているのが「JKビジネス」だ。女子高生が男性客に接客サービスを行うこのビジネスは、2006年頃に秋葉原で登場した「JKリフレ」を皮切りに、どれだけ警察が摘発しても名称を変えながら残り続けている。
そのひとつ、「JK作業所」とは、女子高生に下着が見える格好をさせた上で、折り鶴を折ったり、ビーズでアクセサリーを作ったり、彼女たちがなにかしら作業するところをマジックミラー越しに覗くというもの。さらに「裏オプション」が存在し、「ラップ越しのキス」や「女子高生の足の臭いかぎ」も用意されているという。…これに通う男性客の気が知れない。
最近では「JK占い」なるものも登場。占いの形態をとることで女子高生とのプライベートな空間を提供し、ここでも裏オプションを展開する。門倉先生の試算よると、JKビジネスの市場規模は年間799億円。JKビジネスで働いた可能性のある女子高生は都内で約1万4000人以上! 悲しいことに1つのウラ産業として形成されつつある。
■2年間で1億7000万円の荒稼ぎを可能にする「無料低額宿泊所」
JKビジネスと同様に社会問題化しているのが「貧困ビジネス」だ。その1つに生活保護費を狙った「無料低額宿泊所」がある。
ホームレスなどの生活困窮者は、野宿などで住所不定のため、行政に対して生活保護費を申請しても認定されにくい問題がある。それを狙った心無い団体や個人がホームレスに声をかけ、アパートや食事を提供する。生活が落ち着いたところで元ホームレスたちに生活保護を申請させ、そのお金が支給されるようになると、保護費の大半をピンハネしてしまうのだ。
事実、さいたま市などで無料低額宿泊所を運営していた男が所得税法違反の容疑で逮捕されている。問題はその額だ。2009年から2010年の2年間で、なんと約1億7000万円の荒稼ぎ! どうやったらこれだけ悪質に稼げるのか。
この男が運営する宿泊所に身を寄せていた入居者たちは、ベニヤ板で3畳のスペースに仕切られた、6畳一間の部屋に住まわされたという。出てくる食事はカップ麺やレトルトばかり。それにもかかわらず家賃は4万7000円、食費・光熱費にいたっては約6万円! 入居者たちは生活費として毎日500円と月に一度5000円を手渡されただけだそうだ。…あくどい。極悪すぎる。
本書は、日本の地下に蠢くウラの経済の実態をいくつも暴いている。危険ドラッグ1200億円、ヤミ金融7300億円、脱税7兆7000億円、援デリ400億円…。
私たちのオモテの生活の隣では、ひっそりとウラの世界が手をこまねいている。決して足を踏み入れないよう、オモテの経済活動に勤しみたいところだ。
文=いのうえゆきひろ