あなたが太る本当の原因は……成功するダイエットにある2つの共通点
公開日:2018/10/28
これまで肥満というものは、本人の意志や行動の結果起きるものだと考えられていた。つまり、自己責任だ。うっかりおやつを食べてしまったり、つい運動をさぼったりしてしまうのが悪いというわけである。
しかし、本書『果糖中毒――19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか?』(ロバート・H・ラスティグ/ダイヤモンド社)によればそれは大きな誤りだという。著者に言わせると、肥満は自己責任で起きるものではないのだ。もし肥満が自己責任で起きるものだとしたら、乳幼児や動物までもが太ってきている現象をどう説明すればいいのだろう。
肥満の世界的大流行は私たちの生化学的反応の変化が原因で、それを引き起こしたのは環境の変化なのである。
この「環境」には、さまざまな要素が含まれている。大気汚染やエストロゲンを始めとする化学物質、風邪のウイルスに至るまで、私たちは無数の「太らせ因子」に囲まれて生きているのだ。
これらの「太らせ因子」は食欲や代謝に影響するホルモンの分泌を狂わせ、私たちの食欲を暴走させたり、代謝に悪影響を与えたりする原因になる。それを意志の力だけでどうにかしようとするのは困難だ。
なかでも著者がもっとも問題視しているのが食生活の変化、なかでも果糖のとり過ぎである。
果糖はノンカロリー甘味料をのぞく、すべての甘味料に含まれている糖の一種だ。私たちが普段「甘い」と感じるものには果糖が含まれている可能性が非常に高い。調味料として欠かせない存在である砂糖(ショ糖)も半分はブドウ糖、半分は果糖でできている。
世界の人口は2倍しか増えていないのに、砂糖の消費量は過去50年間で3倍になった。
甘いお菓子や清涼飲料水といった糖分を含む加工食品が日常的に、それも安く手に入るようになり、私たちは人類史上これまで想像できなかったような量の果糖を消費するようになっている。著者によれば、こうした状況こそが世界中の人々の肥満を招いている原因だという。
果糖がここまで問題視されるのは、果糖の代謝プロセスが肝臓に大きな負担をかけるからだ。果糖はほぼすべてが肝臓で代謝されるため、大量に摂取すると肝臓の処理能力を超えてしまう。その結果、血糖値を下げるのに必要なインスリンが肝臓で効かなくなってしまい、膵臓から大量のインスリンが分泌されることになる。
インスリンは余分なエネルギーを脂肪に変えて貯蔵する作用のあるホルモンであり、インスリンの分泌量が多ければ多いほどより多くの脂肪が身体に蓄えられることになる。さらに、大量のインスリンは食欲増加も招く。食欲をコントロールするホルモン・レプチンの働きを邪魔して、「飢餓状態にある」と脳を勘違いさせてしまうからだ。
大量の果糖は確実に、私たちの代謝や体重のコントロールに悪影響を与えるのである。どうやら、糖分の摂取量を制限することは健康的に減量するためには避けて通れない道といえそうだ。
実際、著者の検証によれば、成功するダイエットには2つの共通点があるという。それが、低糖、高食物繊維である。低糖とは砂糖や果糖といった添加された糖分が少ないこと、高食物繊維とは野菜や全粒穀物といった食物繊維を多く含む食材をふんだんに取り入れることを指す。食物繊維にはインスリンの大量分泌を抑えるなどの働きがあり、果糖の害を抑える「解毒剤」になってくれる。白米を食べる伝統的な和食が「ダイエットによい」と評価されるのも、大量の野菜で食物繊維をきちんと補っているからである。
そして、果糖の害から身を守り、ホルモンの分泌を正常化するために、著者は果糖や添加物を大量に含む加工食品を避け、低糖・高食物繊維の自然に近い食品を食べて生活することをすすめる。
本書は『果糖中毒』という邦題の通り、果糖の過剰摂取への警鐘が中心的なテーマとなっているが、他にも運動の効用、代謝のメカニズムなどダイエットや健康を考える上で有用なさまざまなテーマが扱われている。また、単純な糖質制限本というわけでもないので、流行の糖質制限に抵抗がある人でも読みやすいだろう。
なかなかダイエットがうまくいかない人、食生活を見直したい人におすすめの一冊だ。
文=紀村真利