3ポイントシュートを必ず決める方法、球場でホームランを打つ方法。全て解説します!
公開日:2018/10/28
スポーツはやって楽しく、見てワクワクするものだ。休日に趣味として熱中する人がたくさんいる。スポーツは体を動かしてなんぼの一面があるのでひたすらフィジカルな練習をする人が多いが、実はある学問が大きく関係している。物理学だ。競技の道具を操り、全身を使いこなすスポーツは、物理学でその仕組みを理解することで、より一層上達したり観戦が楽しくなったりするのだ。
『おもしろい! スポーツの物理』(望月 修/講談社)は、陸上、サッカー、テニス、バスケなど、13種のスポーツを物理学の視点で解説する1冊。本書から、知って得するスポーツの豆知識をご紹介したい。
■「3ポイントシュート」を必ず決める方法は?
バスケットボールをしたら、誰もが一度は決めたくなる3ポイントシュート。何度打ってもゴールリングに当たればいいほうで、あらぬ方向にボールが飛んでしまうこの挑戦、物理学の見地ではどのようにシュートを打てばいいのか。
地球上の物体は引力の働きによって、空中に投げ上げると山なりの軌道を描く。これを放物線という。3ポイントを打つときも放物線を描くのだが、このシュートのやっかいなところは、ボールとゴールリングの大きさ、シュートを決める位置関係のせいで、ゴールに入る瞬間のボールの傾きが33°以上でないと失敗してしまうこと。
3ポイントシュートがなかなか決まらない理由は、それを成功させるための放物線が私たちのイメージよりも高いことにある。ゴールリングを目標にボールを投げてしまうと低すぎるのだ。
3ポイントシュートを決める正しい放物線は、ボールを8.8m/s(1秒間で8.8m進む速さ)で、45°の角度で押し上げるようにシュートを打つことだ。イメージは、目線をゴールリングの高さの2倍くらいにしてボールを投げてみる。これが実践できれば、最高点3.97mの放物線を描いたのち、35°の傾きでゴールリングにスルリと決まるという。
■テニスボールはなぜ毛むくじゃらなの?
多くの球技は、ボールがある程度つるつるしている。ボールに毛が生えているメジャースポーツは、テニスで使用するテニスボールくらいかもしれない。しかしなぜテニスボールはあんなにも“フサフサ”なのだろうか。
テニスの場合、プロ選手のサーブは凄まじい速度が出る。なんと時速200㎞だ。メジャーの大谷選手の投げるボールより速い。そのため、テニスボール大の物体が時速200㎞で飛ぶと、ボールにかかる空気抵抗が予測できない領域に入る。ボールが急に遅くなって落ちたり、急にカーブしたり、ナックルボールのようにフラフラしたり、漫画で見るような魔球連発で球技として成立しなくなるのだという。
そこでその表面にフェルトをまとわせて毛むくじゃらにすることで、ボール周りの空気の流れを穏やかにし、ボールの軌道を予測しやすいものにしている。テニスボールに毛が生えている理由は、空気抵抗を安定させることで魔球を防ぐ役割を果たしていたのだった。
■小学生が球場でホームランを打つ方法
今年も大きな盛り上がりを見せた高校野球やプロ野球。野球観戦を楽しむ人は数年前より格段に増えており、一時期の野球離れは解消しつつある。野球の花形といえば、やはりホームラン。チームの4番がどデカい1発を放つだけで球場が大いに盛り上がる。
実はあのホームラン、プロ選手よりはるかに体の小さい小学校高学年でも打てる可能性があるという。
ホームランとは、球場や打者のパワーにもよるが、100mの放物線を描くことだ。そのためにはボールを45°上方向に時速113kmで飛ばす必要がある。
ピッチャーが時速100㎞の速球を投げてくる場合、時速90㎞のスイングスピードで、ボールの下側10°~40°の範囲に当たれば、100mを飛ばすことが可能だ。…金属バットなら、小学生でも可能性が見えてくる。
スイングスピードを時速60㎞まで落とした場合でも、バットの上側24.7°の部分で、ボールの下側20°~30°の部分に当てれば、117m飛ぶホームランになる。
可能性は超絶低いかもしれないが、プロ野球選手が活躍する球場で小学生がホームランを打つ。プロに憧れる野球少年にとっては夢のような話だ。
このように本書は、思わず誰かに話したくなるスポーツの雑学をいくつも紹介している。そもそも小学生高学年向けの書籍なので、部活動に励む子どもや、あるいはスポーツはちょっと苦手、という子どもに興味を持たせるために読ませてもいいだろう。きっといつもの練習が向上し、本番で結果を出せるはずだ。
正直なところ物理学はとっつきにくいかもしれない。しかし、私たちの日常にあふれる現象を解明する大切な学問だ。その物理学の視点からスポーツを見つめると、理解が深まってもっともっと楽しくなる。スポーツは素晴らしい。そして物理学も素晴らしい。
文=いのうえゆきひろ