なんで、あなたの説明はわかりにくいのか?

ビジネス

公開日:2018/10/31

『ひと言で伝えろ』(石田章洋/WAVE出版)

「しっかりと説明したのにわかってもらえない」「周囲の人に『それで、結局なにが言いたいの?』と聞き返される」、こんな経験をしたことはないだろうか。こうなってしまう原因は2つ。それは、あなたの話が、「長くて」「わかりにくい」から――『ひと言で伝えろ』(石田章洋/WAVE出版)では、『世界ふしぎ発見!』の放送作家が言いたいことを確実にわかってもらうための「説明の技術」について紹介している。

 著者は『世界ふしぎ発見!』をはじめ、長年テレビ業界で伝える仕事をしてきたベテランの放送作家・石田章洋さん。歴史や地理、政治や経済など、本来は難しいジャンルの情報を、お茶の間にいる視聴者に楽しくお届けし続けてきた。本書では、その技術を惜しげもなく披露している。

伝わらない原因は「不足」ではなく「過多」

 本書には「なるほど」と声に出してしまう「伝える技術」が詰まっているのだが、そのなかでもまず知っておきたいこと。それは「説明がわかりにくい人」の最大の特徴だ。説明がわかりにくい人は、「説明が長い」。きちんと伝えるために「漏れなく伝えよう」と、あれもこれも伝えようとする。説明が伝わらないのは、「自分の説明不足だ」と思うかもしれない。が、これは実は逆効果になっているという。

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 その理由は極めてシンプルで、説明が長いといちばん伝えたいことがわかりにくいのだ。また、説明過多になると相手は情報を処理しきれなくなり、相手にとってストレスになることも。正確に伝えようとしっかり説明しようとすればするほど、よくわかってもらえないとは…目からウロコである。

「説明が長い」と伝わりにくい。それでは、どうすれば上手に伝わるようになるのか。そのポイントは2つ。「短くすること」と「わかりやすくすること」だと、石田さんは言う。
もちろん、ただ短くするだけではなく、短い話の中に必要な情報をきちんと入れて、それをわかりやすく伝えることが重要だ。それでは、短くてわかりやすい説明とはどういうものか。本書でとりあげられていた、ある人物が「時間の相対性」について説明した言葉を紹介したい。

「熱いストーブの上に1分間、手を乗せてみてください。まるで1時間ぐらいに感じられるでしょう。ところが、かわいい女の子と一緒に1時間座っていても、1分ぐらいにしか感じられない。それが相対性というものです」

 これは「相対性理論をわかりやすく説明してほしい」と言われたアルベルト・アインシュタインの言葉だ。物理学に詳しくない人でもこの説明なら相対性理論が「時間とは相対的なものなのだ」とわかる。本書には、情報の正確性より「わかりやすさ」を優先して伝える大切さ、説明を一言でわかりやすく伝えるために物事を抽象化したり、具体化したりするノウハウがわかりやすくまとめられている。

 ビジネスやプライベートでも、伝えることは重要なスキル。話すことが苦手だとしても、ずっと黙っているわけにはいかない。「どう伝えていいかわからない」「なにを言いたかったのかわからなくなる」、そんな人もちょっとしたコツさえ覚えれば、説明下手から脱することも夢ではない。本書は「メールで説明することが多い」現実も考えて、論理的で伝わるメールを書けるコツも紹介。本書を読めば、わかりやすく伝えること、その具体的な「説明の技術」が手に入ることだろう。

文=なつめ