坂口健太郎「諸戸道雄を演じてみたい。すべてがむき出しのロマンチックな存在」
公開日:2018/11/6
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載「あの人と本の話」。今回登場してくれたのは、11月16日公開の映画『人魚の眠る家』で、物語のキーパーソンである研究者・星野祐也を演じている坂口健太郎さん。自らの読書歴、『孤島の鬼』のこと、そして映画の撮影現場について、お話を聞きました。
坂口さんは子どもの頃から本に親しんできた。
「最初に好きになったのは『ハリー・ポッター』シリーズです。それから宮部みゆきさん。池波正太郎さんや北方謙三さんの歴史小説もよく読みました。村上龍さんも好きです。喫茶店に入ったときに、置いてあった村上さんの本をなんとなく手に取ったのがきっかけなんです。オーラについて語っていて、それがすごく興味深かった。『限りなく透明に近いブルー』や『イン ザ・ミソスープ』、いいですよね」
そんな坂口さんが「最近ドンピシャだった」という一冊が、江戸川乱歩『孤島の鬼』だ。
「事件自体が主人公じゃないかというぐらい刺激的なストーリーですよね。人に薦められて初めて読んだ乱歩なんですが、ここまで面白いとは」
とくに惹かれたのは、登場人物たちの魅力だった。
「探偵の深山木幸吉って面白いキャラですよね。すぐに死んでしまいますけど、おいしいというか(笑)。でも一番好きなのは、諸戸道雄です。どこまでも純粋に蓑浦に恋している」
作中で、坂口さんが一番演じてみたい人物は?と、好奇心から聞いてみた。
「それはやっぱり諸戸でしょうか。彼の内面は燃えたぎっていて、それが前面に出ている。感情も人間的な泥臭さもすべてがむき出しで、だからこそロマンチックな存在です」
坂口さんは、間もなく公開の映画『人魚の眠る家』で、研究者・星野祐也を演じている。播磨薫子(篠原涼子さん)と和昌(西島秀俊さん)の娘・瑞穂は、事故に遭い脳死の可能性が高いと医師に告げられている。薫子と和昌は延命治療のため、星野が開発したANC(人工神経接続技術)に頼っている。脳死や臓器提供、さまざまな問題を提示した作品だ。しかし、撮影現場は意外にも柔らかい空気に包まれていたという。
「難しいテーマですから厳しいシーンも多かったんですが、カメラが回っていないときはものすごく和やかな雰囲気だったんです。篠原さんも西島さんも本当に素敵なお父さんとお母さんで、子役のお子さんたちも本当の家族みたいに甘えていました。お子さんたちは、僕にもすぐに打ち解けてくれて。すごく楽しい現場でした」
ぜひたくさんの方に観てほしいと坂口さんは続ける。
「100人が観たら100通りの感想が生まれる映画です。観客の方一人一人が、それぞれの思いを抱いて映画館をあとにしていただけたら嬉しいなと思います」
(取材・文:松井美緒 写真:キムラタカヒロ)
映画『人魚の眠る家』
原作:東野圭吾『人魚の眠る家』(幻冬舎文庫) 監督:堤 幸彦 脚本:篠?絵里子 出演:篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈ほか 配給:松竹 11月16日(金)全国公開
●薫子と和昌の娘・瑞穂が、プールで溺れ意識不明に。夫婦はANC(人工神経接続技術)を使って延命治療を続け、瑞穂は美しい姿を取り戻していく。しかしそれは薫子を狂気に駆り立てるのだった。
(c)2018「人魚の眠る家」製作委員会