おみやげを買うのは正直言って面倒、という人にオススメの「おみやげのすすめ」

マンガ

公開日:2018/11/2

『おみやげどうしよう?』1巻(西園フミコ/講談社)

 旅行先や出張先で、おみやげを買うのは好きですか? 私はものすごく好きです。各地で出会ったいいもの、おいしいものを、誰かに伝えたいと思うからです。ついでに、日頃の感謝をわかりやすくモノで伝えたいという気持ちも少しあります。ある調査によると、2016年の日本の“旅行のおみやげ”の市場規模は約3030億円なのだとか。これは、同時期のフリマアプリの市場規模とほぼ同じで、大きなマーケットと言えるでしょう。

 一方で、「おみやげを買うのは、正直言って面倒だ」と感じている人も多いかもしれません。時間は取られるし、何を買っていいかわからないし、出費もばかにならないし…。本稿では、そんな方々にもおすすめしたい漫画、『おみやげどうしよう?』1巻(西園フミコ/講談社)を紹介します。

■おみやげが、まさかというモノでも大丈夫

 主人公・基山トウコは大学職員。トウコの働く入試広報課は、受験生勧誘のために全国各地の高校への出張が多い部署です。クールでそつなく仕事をこなし、部署でも一目おかれているトウコが、出張時に仕事と同じぐらい力を入れているのが“職場へのおみやげ探し”。グルメな課長をはじめ、舌の肥えた課員たちに、「味」「配りやすさ」「賞味期限」を考慮したおみやげを探すのは至難の業。考え抜いて選んだおみやげが課員たちに喜ばれると、トウコのテンションも上がり、さらに仕事に打ち込めるのでした。

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 一方、同僚の吉本マコトは、おみやげどころか、同僚にお礼を言うのも業務上不要と感じている超割り切り派。仕事はきっちりやるものの、その物言いが職場を凍り付かせることもしばしば。

 そんな彼はある日ふと、「自分と同じように仕事をしているのに、トウコには人望がある。おみやげ一つで回る仕事などないはずなのに」と疑問に思い、出張先の栃木で職場へのおみやげを買ってみることに。

 吉本が選んだおみやげは、なんと、金谷ホテルベーカリーの食パン1斤(丸ごと!)でした。

「珍しくおみやげを買ってきたと思ったら、食パン1斤?」「どうやって分けるの?」とザワつく職場。でも、トウコとグルメな課長の反応は違いました。すかさず食パンを大学食堂に持ち込んでカット&トーストしてもらいます。金谷ホテルベーカリーの食パンは、おいしいことで有名。きめ細かで柔らかく、しっとりしたトーストを味わった同僚たちは、口々に彼に「ありがとう」とお礼を伝えます。その「ありがとう」の言葉は彼に小さな変化をもたらし、その後、彼は仕事中にも同僚にお礼の言葉をかけるようになるのでした…。

■ご当地グルメを通じてコミュニケーションを

 本書では、トウコが出張先で吟味してチョイスした全国各地のおみやげが、写真や価格、お店情報とともに紹介されており、ご当地グルメに詳しくなれること間違いなしの1冊です。紹介されているおみやげは、メジャーなものからマニアックな一品まで幅広く、食に対する好奇心も刺激されるでしょう。

 メリハリの利いたタッチで描き込まれた表情豊かな登場人物や、職場の同僚たちのキャラクターによって異なる仕事の進め方や恋バナなどのエピソードも読みどころ。登場人物たちの顔芸もおもしろく、ページを繰る手がテンポよく進みます。読めば、コミュニケーションの達人にもなれそうな、そんなご当地グルメ漫画です。

文=水野さちえ