老人たちに忍び寄る詐欺。怪しい“健康食品”のお店で何が行われているのか?

社会

更新日:2020/5/8

『あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと』(ロバート・熊/自由国民社)

 街中でたびたび見かけるのが、老人たちの集まっている怪しいテナント。軒先に掲げられた看板やのぼりには「健康」や「自然食品」なるきれいな言葉が並んでいて、時間が経つと、商品を片手にたくさんのご老人方がご満悦な表情のまま出てきたりする。

 しかし、賢明な読者ならばお気づきだろうが、このような店舗は悪徳商法の疑いが強い。いわゆる詐欺の一種「催眠商法」の代表的な手口であるが、かつてはそんな場所で“だます側”にいた著者が、実態や対策を訴える書籍がある。『あやしい催眠商法 だましの全手口 身近な人を守るために知っておくべきこと』(ロバート・熊/自由国民社)だ。

 かつては詐欺師として好成績を残していた著者が伝える内容はどれも、自分たちの親世代にそっと教えてあげたくなるようなものばかりだ。

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■現場で話していることの9割はどうでもいい「世間話」

 この手の会場を表から見ると、入り口についたて代わりのホワイトボードが置かれていたりと、何が行われているのか分からないこともある。とにかくうさんくさい商品のよさを老人たちへ徹底的に刷り込んでいるのかと思いきや、じつは、内容の9割は「世間話」や「人生の気づきの話」だという。

(C)にゃんとまた旅/ねこまき

 世間話は、会場に集まった近所の老人たちが共通して受け入れやすいもの。講師役の人物が時にはユーモアも交えつつ、親近感をもたらすために軽快なトークを繰り広げる。そして、客との距離が縮まったところで、人生の気づきの話をし始める。これは、お坊さんの説法のようなもので、お金を使わないという心のブレーキを解除させるために用いられる。

 また、会場には複数のスタッフがいるのも一般的であるが、その上で重要な役割を担うのが「アシスタント」の存在だ。

(C)にゃんとまた旅/ねこまき

 彼らに求められていることのひとつは、講師の話を盛り上げるためのあいづちを打つこと。テレビ通販のように、話の合間で「うわ〜、すごい」「そんなにサービスしていいのですか?」など、大げさなリアクションを見せてくる。さらに、もうひとつ重要なのが「客の一人ひとりに接客をしていき仲良くなる」ということ。商品説明が終わったあと、個別に声掛けをして購入を促す役割が与えられているという。