タバコ、飲酒、浪費、スマホ…やめられない悪癖と今年のうちにサヨナラする秘訣
更新日:2021/6/28
タバコ、過度の飲酒、ギャンブル、散財グセ、SNS依存など、誰にもひとつくらい「やめられないで困っている」という悪癖があるだろう。近年では特に、時に死にさえ至る「ながらスマホ」が、まるでウィルス病のように世界に蔓延している。
ちなみに日本では、スマホ(携帯を含む)原因の交通事故は2016年度で1999件。その内27件が死亡事故だという(警察庁発表)。スマホと命を天秤にかけてしまう時代なのだ。
なぜ悪癖はいとも簡単に身(脳)に染み込むのか? どうすれば、本当に手放せるのか? その答えを知りたい方にオススメの1冊が、『あなたの脳は変えられる 「やめられない!」の神経ループから抜け出す方法』(ジャドソン・ブルワー:著、久賀谷 亮:監訳・解説、岩坂 彰:訳/ダイヤモンド社)だ。
本書の結論をまず言おう。さまざまな依存症や悪癖から脱却する方法を模索した、精神科医でマサチューセッツ大学医学准教授でもある著者がたどり着いた最善策、それは「マインドフルネス」だ。
本書で、著者は自身が行った臨床研究での被験者データや、脳の仕組みなど、さまざまな科学的な根拠を示しながら、「マインドフルネス」が「やめられない脳」を変えられるという理由を解き明かしていく。
■マインドフルネスによる「禁煙法」が効果絶大な理由とは?
近年、有名企業が社員研修などに導入し始めたことでも一躍注目された仏教伝来の内観法(自分の思いや心を観ること)であるマインドフルネス。本書によれば、そのエクササイズでは、煩雑になりがちな思考や心を、瞑想などのメソッドや日常の所作を通して、「ひとつのこと」と「今ここ」に集中させる。
例えば、「食事」でマインドフルネスを実践する時は、ながらスマホやテレビ、おしゃべりもやめて、「今している食事」だけに集中する。その際、五感を総動員して食材を味わい、香りや見た目、噛んだ際の音などにも注意を向ける。
このエクササイズ中の自分を、母親(つまり第三者)のような、温もりのある視点で観察し、自分がなにかを感じたり考えようとも、「そこから距離を置き、良し悪しの判断はしない」のが、マインドフルネスの特徴だ。
急に怒りが湧いたとしても、それに同調せず批判もせず「そういう思いがあるんだね」と「現在のこの瞬間の、自分の思考や心の在り方に気づく」ことをまず行うのである。
本書には、著者が考案したマインドフルネスによる「禁煙法」の詳細が記されている。それによれば、一般的な認知行動療法による禁煙法に比べ、マインドフルネスを使った禁煙法は多くの被験者に有効だったという。
五感を使って「タバコを吸っている自分」を観察させると、「臭いは腐ったチーズのようで、化学薬品のようにまずかった」ことに気づき、「吸わないでいるときの自分」を観察させることで、「本当は吸わないでもいられる自分」に気づいたりする。これらの気づきの連鎖が、被験者たちを無理なく自然にタバコからの離脱へと導くそうだ。
■「本当のところ、なにを得ているのか?」に気づくことが重要
一方で認知行動療法などでは、「タバコを吸えば肺がんになる」という認知(ものの見方)によって、行動をコントロールさせようとすることで、依存症からの脱却を目指すという。しかし著者によれば、行動のコントロール(つまりタバコに手を伸ばせない)というストレスは、行動の抑制を行わせる前頭前皮質を真っ先に麻痺させるため、行動は元に戻ってしまう、すなわちタバコを吸うという結果になるという。
つまり、依存や悪習慣を治すには、その行動から「本当のところ何を得ているのかに気づかせて、呪縛から解放させるという根本治療が重要」であり、それを無理なく、投薬も必要なく行えるのがマインドフルネス、ということになるそうだ。
本書には、著者が実際に被験者に使った「RAIN」と名付けられたプログラムの詳細な記述もあるので、禁煙したい人はぜひ本書で挑戦してみてほしい。
本書には他にも、「刺激→行動→報酬」と習慣化する脳の基本メカニズムや、スマホやSNS、ドラッグ、セックス依存などに「ハマるメカニズム」、そしてそれらに対するマインドフルネスの実践法が詳細に記されている。
本書を読んで、筆者もとりあえず2つほどの悪癖に、目下対処中だ。その成果まではご報告できないが、見通しはすこぶる明るいものを感じている。
皆さんもぜひ本書を熟読しつつ、長年連れ添った悪癖と、今年のうちにお別れしてみてはいかがだろうか?
文=町田光