イケメンになった途端、周囲の反応が激変…! 話題のマンガ『外見至上主義』が世知辛すぎる
更新日:2018/11/19
「けっきょく見た目だよね」なんて嘆きのセリフは今も昔もよく聞くものだ。しかし、それを私たちはどれだけ本気で捉えているだろう。そうは言いつつも、心の奥底ではどこか「でも、私の外見ではなく中身をきちんと見てくれる人がいるはずだ……」なんて期待感をもったりはしていないか。
そういった幻想を打ち砕くのが、漫画『外見至上主義』(T.Jun/KADOKAWA)だ。そのタイトル通り、容姿ひとつで世界が様変わりする物語である。
主人公の蛍介は、容姿と弱気な性格のせいで酷いいじめにあっていた。そんな息子のいじめを知った母は、貧乏ながらも彼を有名芸術高校に転校させてあげることを決意する。人生をリセットするため、蛍介は母親を残し単身、新境地へ。今度こそいじめとは無縁の世界に行くぞ、と意気込むのもつかの間、新しく住む街で再び同い年の男の子にボコボコにされてしまう。
どこに行ってもダメなのか、と絶望に暮れる中、蛍介の身に摩訶不思議な現象が起きる。
朝起きて鏡を見ると、そこには自分とは似ても似つかない、高身長のイケメンが立っていたのだ。振り返ると、いつもの自分の体は後ろでスヤスヤと寝ている。無理やり起こすと、今度は自分の体で起きて、イケメンの謎の男が隣でスヤスヤと寝ている。彼は意識こそ変わらないものの、二つの体を行き来することができるようになっていたのだ。
新しい学校での、第一歩。最初の登校を、彼はイケメンの姿で行くことに決める。本来のブサイクな彼の体を家に置いて、イケメンの姿で登校すると、今まで見てきたものとはまるで違う光景が広がっていた。
歩けば周囲の女性が頬を赤らめて見つめてくる。今までは女性に見向きもされなかったのに、イケメンになった途端にあからさまなアピールをしてくる女子が現れる。男性も彼に畏怖を抱き、決していじめたりしてこようとしない。むしろ女性の視線を集める彼に、陰でやきもきしたりする始末。
見た目が違うだけで、性格はそこまで大きく変わらない。彼は偉そうにすることもなければ、女性を落とそうと試みることもない。むしろ喧嘩を売られてあたふたしたり、喋りかけられて緊張したりする様は、今までのブサイクな彼を彷彿とさせる。しかし、ブサイクなときは舐められたりボコられたりしていた要素が、イケメンになった途端に周囲に好感や恐怖を与えたりするから残酷だ。
第1巻は、彼がイケメンとブサイクの二つの世界を行き来しながら、その不条理さをしっかりと味わうことができる内容だ。それに加えて、今後の物語を大きく動かしていきそうな新たなキャラクターたちも多数出てくる。喧嘩が強く男前だが頭の弱い建築学科の馬場晃司、喧嘩には興味がない飄々とした美容学科の磯野聡。グラサンで顔がわからないが自分と主人公とどちらがイケてるのか気になっているヴォーカルダンス学科の埼玉貴仁。
『外見至上主義』は、もともと韓国の漫画家T.Junが描いた作品で、日本語に翻訳されてXOYで連載されていた。イケメンの容姿などは、確かに韓流を感じさせる部分がある。
縦スクロールの漫画は単行本化に伴い、改めてコマ割りが組まれているが、全く違和感なく読むことができる。また、単行本特典である、主人公と同じ学科で寡黙な四宮目線の四コマが、かなり良い。ミステリアスで何を考えているのかわかりづらい四宮の魅力が詰まっていて、最後の最後に四宮ファンが急増するのではないか。
第1巻を読む限りは、「やっぱり、けっきょく外見なのか……」と世知辛くなる内容だが、果たして今後どう展開していくのかは未知数だ。主人公の(イケメンとブサイクを行き来する)二拠点生活のこれからが気になる。
文=園田菜々