『アイドルマスターシンデレラガールズ』7年の軌跡④(城ヶ崎美嘉編):佳村はるかインタビュー

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公開日:2018/11/8

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『アイドルマスターシンデレラガールズ』のプロジェクトが2011年にスタートして、今年で7周年。11月と12月にメットライフドーム&ナゴヤドームでの6thライブを控える『シンデレラガールズ』は、7年間で大きく成長を遂げ、多くのプロデューサー(=ファン)に愛されてきた。今回の特集記事では、2014年の1stライブ(舞浜アンフィシアター)に出演したキャスト6人の言葉から、『シンデレラガールズ』の軌跡をたどってみたい。彼女たちは、自身が演じるアイドルとどう向き合い、楽曲にどんな想いを託してきたのか――第4回は、城ヶ崎美嘉役・佳村はるかのインタビューをお届けする。

「美嘉ならこうするだろうな」という想いでステージに立ってる

――『アイドルマスター シンデレラガールズ』のゲームが2011年にリリースされて、今年で7周年になるわけですけど、長い期間関わってきて、プロジェクトにどんな印象を感じていますか。

佳村:『アイドルマスターシンデレラガールズ』では、プロデューサーさんのプロデュースによって、いろいろな経験を経てアイドルたちが成長していくんですけど、やっぱり何年もつき合っていくうちに、プロデューサーさんの気持ちや反応によって、『アイドルマスター シンデレラガールズ』も変わってきているなあ、と思います。今もまだ成長途中なので集大成ではありませんが、根っこにはプロデューサーさんとアイドルがアイドル道を極めていくところがありつつ、時代とともに変わってきているイメージがあります。

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――城ヶ崎美嘉との出会いからも長い時間が経って、向き合う時間を重ねるごとに理解も深まると思うんですけど、最初に彼女に抱いていた印象と今感じていることは変わってたりしますか。

佳村:最初のCDのジャケットでは少し目つきがキツめというか。そのときに収録したセリフでも「オンリー1よりナンバー1」と言っていて、けっこうハングリーだしそれを隠さない、「私は好きなことをやるんだ」という強い意志のもとでスタートしたんですけど、やっぱりそれだけではなくて。「自分が1番になりたい」という気持ちはすごく強いんですけど、仲間のこともすごく大切にするし、まわりのこともいろいろ考えられる子でもあります。もしかしたら、美嘉は一番変化が大きいアイドルかもしれないですね。アニメが始まってから先輩の立場になって、よりまわりのことを気にかけてあげられる存在になってきましたね。でもやっぱりまだ女子高生だし、小さな悩みも自分の中では大きい悩みになってしまったり、自分の中のこだわりや譲れない部分もあるんですけど、最初と比べると、物語が増えていくたびに「こんな部分があったんだなあ」ってわかるようになってきました。

――美嘉を演じてる身として「こういう子なんだなあ」と感じて嬉しかった、理解できてよかったな、と思った部分って、たとえばどういうところですか。

佳村:「カリスマアイドル、城ヶ崎美嘉ちゃんだ~!」っていうセリフがあって、そこから多くの方に「カリスマ」と言われるようになったんですけども、最近『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』のイベントで、「まわりが言ってるだけで、カリスマなんて偽物だよ」っていうセリフがあったんですよ。「いつかみんなに見破られると思うし、私よりカリスマな子が現われると思う。もしかしたら莉嘉なのかもね」って。彼女はカリスマと言われることに対してみんなの期待に応えようと思っているし、キラキラした姿をみんなに見てほしいからこそ努力を惜しまないんですよね。あと、「ステージでは涙を流したことがない」「それでいいじゃん、表向きは」というセリフもあって、それも彼女のことを物語ってるな、と思います。ステージはキラキラして楽しいものだから、涙はステージを降りたときに流せばいいじゃないっていう。そのとき、「やっぱりカリスマだな」と思いました(笑)。

――(笑)「ナンバー1になる」っていう最初の発言からすると、それが表向きの姿に見えているけれども、人間として実はそうではない部分もあって、それを表に見せないためのカリスマイメージであり、ナンバー1志向であり、ということなんですかね。

佳村:確かに。そうなんですよね。だから自ら「カリスマ」と言うセリフがあるのかなと思います。自分のこともちゃんとわかっているけど、あえて言っている部分があるんだろうなあって。

――カリスマではないという自覚もあり、だけどそうであるために努力を惜しまない。それはなぜかというと、たぶん不安だからですよね。でもそれって、後から膨らんでいったパーソナリティだと思うんですよ。もとからそういう人だったというよりは、プロデューサーさんが彼女にそうであってほしいという願望も含んでいるというか。

佳村:そうですね。『アイドルマスター』にはいろんな物語があって、他のアイドルと絡むことで「こんな一面があったんだ!」という発見もあります。ゲームが始まった頃はとても個性的なアイドルが多くて、バラエティ色が強かったんです。だけど、そこにだんだん物語が構築されていって、ひとりの人間になっていく、そこが『アイドルマスター』のすごいところだと思います。

――美嘉役としてここまで過ごしてきて、佳村さん自身が成長を実感しているのはどういうところですか。

佳村:『アイドルマスター』に関わるまで、私自身歌うことが大嫌いだったんです。だけど美嘉は自分のステージでみんなに元気になってほしいと思っている子なので、私も、プロデューサーさんに少しでも楽しく元気になってもらえるように、と思うようになりました。なにより初めてステージに立ったときなんて――聴けたものじゃなかったと思うんですけど……、皆さんが受け入れてくださったので、歌うことに対する意識は変わりましたね。今でもやっぱり、歌は苦手なんですけどね。

――ステージの上ではどうなんですか。

佳村:ステージの上では、歌っているというよりも「アイドルを表現できるかどうか」が大事だと思っています。美嘉はカリスマなのでカッコいい姿をお見せしたいと思っていますが、やっぱりそれだけではなくて、観に来てくださってる皆さんに意識を向けようって思っています。城ヶ崎美嘉として歌うことは嬉しいですし、美嘉のプロデューサーさんに聴いてもらえるのも嬉しいですし、美嘉のことをまだそんなに知らない人に存在を知ってもらえるのもすごく嬉しいですね。

――ステージの上で、彼女に支えられてるのかもしれないですね。

佳村:そうですね。ほんとは、こちらからも支えなきゃいけないんですけど。観てくださってる皆さんに元気になってほしいし、その場を楽しんでもらいたいから、「美嘉ならこうするだろうな」という想いでステージに立ってます。

――これまでのライブで印象に残ってるエピソードについて聞かせてください。

佳村:『アイドルマスター シャイニーフェスタ ローソンパーティー』のときに、沼倉愛美さんから「音程が取れないことよりも、観に来てくれたプロデューサーさんが楽しめないことを考えて」と言われたことがあったんですけど――。

――めちゃくちゃカッコいい(笑)。

佳村:(笑)そうなんです、カッコいいんですよ。「歌が上手い人はいるけど、美嘉として一番上手く歌えるのは、絶対るる(=佳村の愛称)だから」って言われて。それからはちゃんと自信を持って歌うようにしよう、と思いました。それはずっと教訓にしているというか、意識が変わりましたね。

――ライブに出るときもそうだし、アニメの収録もしかりだけど、『シンデレラガールズ』の場合、一緒に出る人が多いじゃないですか。一緒に時間を過ごす中で、メンバー間の関係性が深まっていくことを実感したのはどんなときですか。

佳村:『シンデレラガールズ』の役者さんたちは本当に個性的なメンバーばかりですけど(笑)、やっぱりみんな考えていることは「いいステージにしよう」という想いです。5thライブで全国ツアーになったときに、各地方の公演で、「自分たちのところでこの勢いは止められない」ってみんなが思ったと思うし、「このツアーを、プロデューサーさんに楽しんでもらえるようないいツアーにしよう」っていう意識から、初めて本当の意味でみんながまとまった気がします。

 みんな個性があっていい人たちばかりなんですよ。あと、センターの大橋彩香ちゃんがパフォーマンスで魅せてくれるんですね。はっしーがセンターにいてくれるのは、すごく大きくて。ありのままでいてくれるので、変に気を遣わなくていいというか、新しく仲間に入ってきた子たちもすごくやりやすいと思います。私は、彼女こそカリスマだと思っていて。彼女の中にもいろいろな正義があると思うんですけど、それを他人に押しつけないところがすごいなあ、と思います。彼女が真ん中にいてくれるのは『シンデレラガールズ』の強みですね。

――城ヶ崎美嘉は姉妹でアイドルですけど、妹・莉嘉役の山本希望さんとのコミュニケーションはどういう感じなんですか。

佳村:キャリア的にも、『シンデレラガールズ』でもCDデビューは先輩なので、最初はけっこう気を遣ってずっと「山本さん」って呼んでたんですよ(笑)。けど、あるレッスンのときに「私は力が強い」って言ったらお互いに腕っ節を確かめよう、ということになって。そこでジャイアントスイングを掛け合ってから仲良くなりました(笑)。物事をポジティブに受け止める芯が強い女性なので、話していても悩みごとを解決策に導いてくれるというか。私にとって希望ちゃんは信頼と信用の塊だし、素敵な女性だなあと思います。今は、ナチュラルに「お姉ちゃん」って呼んでくれます。

 新しい仲間の子たちがたくさん入ってきてくれましたけど、みんながいろんなカラーを持っていて、ライブのたびにハッと驚くことが多いです。近々だと『SS3A』公演に出ていた(藤原肇役の)鈴木みのりちゃんの歌がすごく上手で、童話の『シンデレラ』を思わせるような、キラキラした魔法がかかったステージを見せてもらって、「そうか、『シンデレラガールズ』って根本は『シンデレラ』なんだあ」とか、よくわからないことを思ったりして(笑)。新しい仲間が増えていくことで、ライブの新しい楽しみが生まれるのも『シンデレラガールズ』の強みだと思います。

美嘉が「ステージ上では涙を流さない」って言ってるので、私も泣かなくなった

――個人的に思い入れの強い楽曲について教えてください。

佳村:やっぱり“TOKIMEKIエスカレート”ですね。だけど、歌は苦手なので、レコーディングの前に練習日を取っていただいて――そのときにスタッフさんが「ダメだな」っていう感じをまったく出さずに、「どんどんよくなっていくね」って言っていただいて、真摯に向き合ってくださったんです。なので “TOKIMEKIエスカレート”は恥ずかしながら「自分がこうして美嘉を演じました」というよりも、みんなでこの曲を作ったので、すごく思い入れがあります。

――実際、音源化されてからかなりの回数歌ってきたと思うんですけど、みんなで作った“TOKIMEKIエスカレート”は今、佳村さんにはどう見えてますか。

佳村:“TOKIMEKIエスカレート”の歌詞には、《本当は不安だけど…》《TOKIMEKIどこまでも エスカレート》《ハートはデコらず伝えるの》といった美嘉の気持ちが描かれているんですけど、いろんな人と出会い美嘉の立場も変わったりしていますが、この曲の芯にあるものは変わっていないのが、すごいなと思います。

――歌詞に書かれてる内容は、その後の美嘉に相当影響を与えてるんでしょうね。強気に打って出る部分と、繊細な内面が同居しているというか。

佳村:そうですね。今思うと、美嘉が一番見せたくない部分も歌にして、内面の部分を出しているな、と思います。

――今度の6thライブは、どんな気持ちで臨みたいと考えていますか。

佳村:とても大きなステージなので、より多くのプロデューサーさんと出会えるライブになると思いますし、どれだけその時間を楽しんでいただけるかが大事だと思います。あとは……正直、11月のメットライフドームはとても寒いと思います。寒いと思うんですけど、本番中は寒いとは感じさせずに「来てよかった」と思ってもらえるようにみんなで頑張りますので、楽しい時間を一緒に過ごしたいです。

――最後に、これまで時間をともに過ごしてきた城ヶ崎美嘉に今伝えたい言葉を教えてください。

佳村:「美嘉は本物のカリスマアイドルだよ」って伝えたいです。やっぱり、努力も含めてカリスマだと思うし、ステージに出る直前まで努力を惜しまない人なんですよね。私自身も影響を受けていて、美嘉がコミュで「ステージ上では涙を流さない」と言ってるので、私も泣かなくなりました。美嘉にとってステージはそういう場所なんだとしたら、私にとっても同じなので。過去にいっぱい泣いてしまったこともありますが、これからは笑顔で!

取材・文=清水大輔