ジタハラに負けず定時に帰りたいならば、「なる早」「今日中」はNGワード!
公開日:2018/11/9
同じような仕事をしていても、定時でスパッと帰る人もいれば、あれこれと不測の事態が発生し、結局何時間も残業してしまう人もいる。その差は、いったいどこで生まれるのだろうか。それは、もしかすると“段取り”の違いなのかもしれない。本書『いちばん大切なのに誰も教えてくれない段取りの教科書』(水野 学/ダイヤモンド社)は、いくつもの業務を並行して処理する忙しい社会人に、“質”と“スピード”の両方を高めるためのノウハウを具体的に教えてくれる。著者は、「くまモン」の生みの親としても知られるクリエイティブディレクターの水野学氏。常に何十件ものプロジェクトを請け負う同氏は、それらをスムーズに同時進行するための、いわば“段取り”のスペシャリストだ。本稿では、そんな著者の仕事論をいくつか紹介したい。
■「型」を決めることが質とスピードのアップに
デザインのようなクリエイティブな仕事でも、「型」を決めることで効率化することができる。例えば、著者の会社・グッドデザインカンパニーでは、他のデザイン会社の3~4倍のデザイン案件を世に送り出しているが、その秘訣も“段取り”にあるそうだ。大量のデザインを必要とする案件でも、著者が基本のレイアウトを作成し、あとは文字や写真などのパーツを変えれば済む程度まで決めてしまう。そうすると後は「型」通りにやればいいから、経験の浅いスタッフにも任せられるのだという。デザインでもここまで効率化できるのだから、会社員の仕事でも、多くの「型」を作れるだろう。
■まず「知ること」からすべてははじまる
どんなアイディアも「ある日突然思い浮かぶ」ということはない。著者によれば、一般に“センス”と呼ばれているものは、多くの知識をストックし、最適な組み合わせを考える中で磨かれるものなのだという。“段取り”においてもこれは同じで、新しいプロジェクトがスタートするときには、まずそのことについて徹底的に調べ上げ、ときには専門家に話を聞きに行くこともあるそうだ。こうした知識によって「やるべきこと」が明確になり、必要な工程を取りこぼすことがなくなる。
■「なる早」「今日中」は危険ワード
これは、ライター業においても「あるある」なのだが、仕事において「なる早」「今日中」という締め切りの設定は危険だ。なぜなら、こうした“あいまいな締め切り”は、何も決めていないのも同然だからである。筆者も編集者から「今日中でお願いします」と言われたときに、本当の締め切りが「編集者が退社する時間」なのか、「日付が変わる瞬間」なのか、もしくは「翌日編集者が出社する時間」なのかわからない。そうなるとつい「明日の朝やろう」と甘えてしまい、早く起きることができず結局提出は11時くらいに…なんてこともある(ごめんなさい)。
著者は、仕事ではこうしたあいまいな表現を使うのではなく、誰もが共通理解を得られる“時間・時刻”という尺度で締め切りを設定すべきだと説く。これはすぐに活用できそうなアイディアだ。
働き方改革が進行する一方で、「時短ハラスメント(ジタハラ)」という言葉が今年の新語・流行語にノミネートされている。遅くまで会社に残ってがんばる人よりも、限られた時間の中で高い成果をあげる人が評価されるのも事実だ。仕事の“スピード”と“質”――その両方を高めることはそう簡単ではない。だが、著者の水野学氏は間違いなくそれを実行している。あなたも本書の力を借りて、定時でスパっと帰れる社会人を目指してみては?
文=中川 凌