震えるほどの恋の記憶を抱き、少女たちは生きる…三浦しをん『ののはな通信』を読書メーターユーザーはどう読んだ?

文芸・カルチャー

更新日:2018/11/14

『ののはな通信』(三浦しをん/KADOKAWA)

 魂が引き寄せられ、結ばれる。そんな美しくも麗しい瞬間をあなたは体感したことがあるだろうか。思い出すだけで全身が揺さぶられる運命の恋。そんな恋を経験してきた2人の女子の物語はあなたにもきっと深い感動を与えるに違いない。

 三浦しをん氏著『ののはな通信』(KADOKAWA)は、お嬢様学校で出会った2人の女子の甘美で残酷な愛の物語。2人はただの友達同士ではない。友達から親友、親友から恋人となり、幾度の別れを経ても強い絆で結ばれる。そんな彼女たちの40年あまりが、手紙やメールの文面だけで綴られる。読者たちは秘密のやりとりをこっそりと覗き見しているような気分にさせられ、そして、その愛の深さに圧倒させられるのだ。

 横浜のミッション系のお嬢様学校・聖フランチェスカに通う、野々原茜と牧田はな。2人は互いを「のの」「はな」と呼び合い、手紙を交換し合いながら、友情を育んできた。庶民的な家庭で育ち、頭脳明晰、クールで毒舌なのの。外交官の家に生まれ、天真爛漫で甘え上手のはな。親友となった2人にいつしか芽生えた友情以上の気持ち。不器用に交際をスタートした2人だが、彼女たちの交際は、ある裏切りによって突如として終わる。だが、別れの時が来ても、互いを思う気持ちは変わることはない。高校を卒業し、大学に進んでからも、その後、大人になってからも、手紙やメールで交流は続いていく。

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 2人の女子の半生を描いたこの名作を読書メーターユーザーたちはどう読んだのだろうか。

読了後、すごい本を読んだ、という事以外しばらく言葉が見つからなかった。ミッション系お嬢様女子高に通う、ふたりの女の子。ふたりが交わす手紙で構成された全編往復書簡形式の長編小説。もうこれだけで心は鷲掴み。10代のふたりから20代へ、そして40代。「一生に一度しか味わえない、もしかしたら味あわずに終わるひともいるのかもしれないと思えるほど、とても密度の高い経験」そんな風に思える想い、私にはあっただろうか。最初から最後まで、本当に密度の濃い作品。素晴らしかった。可愛らしい草花が描かれた装幀も素敵。――sachi

友情とか愛情とか家族とか一言で括ろうとすると、こぼれ落ちてしまうなにかがある。しをんさんはいつだってそのこぼれたものを丁寧に掬って、素敵な物語を作り上げる。10代から40代までの2人の往復書簡だけで、不思議なくらい情景が、そして気持ちが伝わってくるからすごい。――Imax

あっという間に読んでしまった。この分厚いのを…と自分でも少しびっくり。往復書簡の形式なのでサクサク読めた。いろんなことを考えた。これは勿論同性愛の話なんだけど、読んでいてそれだけじゃなくて、うーんなんだろう。一人の人間と一人の人間の愛のお話しだった。恋愛の愛でなくて、もっとスケールの大きな愛のおはなし。魂と魂の結びつき。――小次郎

どうして人は、友情とか恋愛とか男とか女とか区別したがるのだろう。そんな陳腐な枠で二人の関係が定まることはないのに。「のの」と「はな」、二人の女性は高校時代に知り合い、その後の長い年月を幾度の別れを経験しながらも共に寄り添う。例え側にいなくても二人の気持ちは一つ。この二人の関係を一つの言葉で決めつけることなんてできない。善悪を越えて相手の存在そのものを許し、相手をまるごと受け止める。そんな尊い想いに「友」だの「愛」だのと名前を勝手に付けられないことを、この物語を通して知った。――nico

 遠く離れていても、連絡が取れない時があっても、2人は確かに繋がっている。「あなたに出会ったおかげで、私は人間としての生きる喜びと苦しみのすべてを知りました。感謝します。神さまにではなく、あなたに」。深い絆で結ば

れた2人に訪れる過酷な運命。変化する時代の中、震えるほどの恋の記憶を胸に彼女たちは生きる。三浦しをん氏の本作は、女子大河小説の最高峰といっても過言ではない。

文=アサトーミナミ