話の通じないクレーマーへの対応は「放置」!? 完全網羅クレーム対応マニュアル
公開日:2018/11/16
世の中が便利になればなるほど、人々は「便利なもの・サービス」を追求して、その満足度のハードルが上がっていく。「お客さまからの“ご意見”に誠心誠意対応し」ていても、客の機嫌は悪くなるばかり。次第に客の口調は強くなり、しまいには罵詈雑言を浴びせられる始末。些細なことで人格を否定され続けていては、強靭な精神がいくつあっても足りるはずがない。そんなことは分かっているのに、有効な対処法を見出せずにこれまで泣き寝入りをくりかえしていたという人に読んでもらいたい書籍を、本稿で紹介しよう。
『対面・電話・メールまで クレーム対応「完全撃退」マニュアル 100業種・5000件を解決したプロが明かす23の技術』(援川 聡/ダイヤモンド社)は、いわゆるモンスタークレーマーに日常から困っている接客業従事者の救世主になり得るだろう。
本書に挙げられている事例から抽出した原理原則は、ほとんどすべてのクレームに対応する汎用性があって、頼もしい味方だ。また、最新の事例を多数掲載しているので、新手のクレームにもきっと対応できるだろう。
■謝罪をするときは、相手に不便をかけたことに対して謝る
たいていのクレームは心を込めてお詫びをすることで解決に向かう。これは多くのクレームが「正当な意見」であり、意見をくれるお客さまも企業側と対決するのが目的ではないからだ。
しかし、クレーム対応の担当者が対応の仕方を間違ってしまったばっかりに、お客さまを“モンスタークレーマー”化させてしまうこともある。クレーム対応の最初の段階で使える技法と、相手の言い分が正当なのかそれとも悪質なクレームなのかを見極める方法はないのだろうか。
本書に挙がっている画期的な対処法のひとつに、お詫びで相手の悪質度合いを測る方法がある。それは「ご不快な思いをさせてしまい申し訳ございません」や「手間を取らせてしまって申し訳ございません」といったお詫びをすることだ。クレームの電話をかけさせてしまった、という事実に変わりはないので、それについて詫びるのはとても大切である。
ところが、そこで「謝ったということは、過失を認めたんだな。補償しろ!」などと言われたときには、相手が悪質であると判断した方がよいという。こうした相手への対応の仕方は本書を参照してほしい。
■やるべき対応をしたらあとは「放置」するしかない
誠心誠意対応をしているのに相手がなかなか引き下がってくれない——こういった事態に陥ってしまった経験はないだろうか。そういう場合は、解決の糸口を見つけなければと奮闘していた人もいるかもしれないが、援川氏によると得策ではないという。それではどうすればいいのかというと、最終的・究極的には「放置」するしかない。
この「放置」が有効なのは、ギブアップしても妥協ができなかった場合や謝って済む問題にできなかった場合、相手がネットにさらすと言い出した場合なのだという。ただ、「放置」とはいっても、相手を完全に放置する場合もあれば、相手の要求には応じずに別の視点から対応するという意味での放置もあるので、詳しい事例などは本書で研究してほしい。
このクレーム対応マニュアルで対処できるトラブルは実に多岐にわたる。しかもクレームの種類ごとにどのページを参照すればよいかが一目でわかる目次もついているから、辞書のように使ってもいいだろう。本書が企業と消費者の間のギスギスした雰囲気を解消することの一助になることを願う。
文=ムラカミ ハヤト
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