好きになった女の子は…コンドームの研究者!? 相模ゴム工業監修、コンドーム製造の裏側も知れる『あそこではたらくムスブさん』
更新日:2018/12/3
突然だが、あなたは「コンドーム」についてどれくらい思いを巡らせたことがあるだろうか? 避妊や性感染症予防に必須のコンドーム。男性は使用感や形状にこだわりや感動を覚えることがあるかもしれないが、女性にとっては、まだまだ未知の部分が多いように感じる。
モリタイシの『あそこではたらくムスブさん』(小学館)は、そんなコンドームの裏側が相模ゴム工業協力のもと、たっぷり描かれたマンガである。
物語は、湘南ゴム工業で働く砂上(さがみ)吾郎(24)が、営業企画室に配属されるところから始まる。彼は、密かに片思いしている総合開発部で働く結(ムスブ)さんと接点ができたことを喜ぶ。
結さんは白衣がよく似合う黒髪の美人。物静かで、日夜研究のことを考えている真面目な女性だ。そんな彼女が会社で研究しているのは、なんとあのコンドーム……!
砂上くんは、初日から試作品のコンドームを結さんから手渡され「感想…また聞かせてください」とお願いされる。
また、男性器の先端…いわゆる「カリ」の部分の大きい人にも快適な着け心地を実現した新商品のネーミング会議で「アリえない程のカリ暮らし」「カリブト君」などの候補が飛び交い、女性を囲んで猥談をしているかのような発言に衝撃を受ける。
だが、彼らは皆、至って真面目。本書では、大切な役割を担うコンドームが、しっかりとした品質管理のもとで製造されている様子が、時に笑いを交えつつも、真剣に描かれているのだ。
例えば、コンドームの物性試験の一つである「破裂試験」。この試験では、規格ならば18リットル空気が入れば合格らしいのだが、彼らが勤務する会社の製品は、なんと45リットルを超えてから破裂していた。
また、規定された回数のピストン運動を行い、装着しているコンドームに穴や破れがないか確認する「耐摩擦試験機」も登場する。見た目のインパクトはもちろん、完成した商品の強度にも驚嘆してしまった。
加えて、第9話では女性のための「潤滑ゼリー」について触れられている。潤滑ゼリーは、性交渉時、濡れにくい女性のために、局部の潤い不足を補い痛みを緩和する目的で使用するもの。彼らの会社では“ローション”ではなく“潤滑ゼリー”という名称を使用することにもこだわっているのだが、その理由に、女性の筆者はとても嬉しくなった。
砂上くんは、時には大好きな結さんを前に、つい口を滑らせ、デリカシーのない発言をして失敗することもある。だが、彼も結さんと同じく、真摯に仕事に取り組み、人の痛みを理解しようとする性格だ。我が身を振り返り、きちんと謝る。
結さんにコンドームの試作品の感想を聞かれ「1人で…使ったんで…」と答えてしまう砂上くん。恋の方も上手く行くように応援したくなってしまうところも、この作品の魅力であった。
コンドームに関わる人たちの熱意がヒシヒシと伝わるマンガだ。結さんの可愛さや真面目さを存分に堪能しつつも、男女共に、彼らのコンドームに対する「本気」にも触れてほしいと願っている。
文=さゆ