ビビらない自分になるためには、そう見えるように“偽装”すること

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公開日:2018/11/26

『ビビらない技法 やさしいあなたが打たれ強くなる心理術』(内藤誼人/だいわ文庫)

 プレゼンテーションで緊張してしまい、思うように話せない……。異性を前にするとおどおどしてうまくいかない……。なにかとビビって、生きづらい日々を送っている人はいないだろうか? かく言うわたしも、取材相手に少しでも威圧的な態度を取られると途端にビビってしまい、しどろもどろになってしまう。そんな気弱な自分を克服するために、『ビビらない技法 やさしいあなたが打たれ強くなる心理術』(内藤誼人/だいわ文庫)を読んだ。

 心理学者の著者いわく、人間はだれでも気が弱い。図太い神経を持っている人は、本当に神経が図太いのかというと、決してそんなことはない。そう見えるだけの話だというのだ。坂本龍馬も臆病者で、寝小便ばかりしていた。気が強そうに見える人は、上手に本当の自分を見せないように偽装しているだけで、本当はみんな気が弱い。本書では具体的に「気が強そうに見える」技法、つまりビビらないための技法を紹介している。

 物怖じしない人がやっていることとして、「近寄って話す」「相手を触る」「相手の目を見て話す」「身振りが大きい」などが挙げられる。中でも筆者がすぐに真似したいと思ったのは、「ブランド品を持つ」。だれに見られても恥ずかしくないようなモノをひとつ持っていると、心理的にも「自分は一流の人間なんだ」という思い込みを強化することができるという。モノを所有することは、「拡張自我」と言って、わたしたちの自我を拡張する働きをするというのだ。確かに、いいものを身につけたり、高い化粧品を使ったりしていると、自分が“いい女”になった気がして、気分が上がる。そういうときは、いつもは気弱な筆者でも、人前で堂々と話すことができる。ブランド品に限らず、身だしなみを整えることは、大きな自信に繋がるのであろう。

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 本書はこれでもかと“ビビらない技法”を紹介しているが、最後に「ビビりでもいいじゃないか」と著者は述べている。ビビりでもいい。というか、ビビりだからこそのメリットもある。気が弱い人は、相手に舐められるかもしれない。しかしそんなあなただからこそ、「信頼できる」「根が優しくて好き」「一緒にいて安心感がある」と思ってくれる人は確実に存在する。気が弱い人はリーダーに向いていないように思われるが、部下を尊重し、大切にし、信頼を維持しつつ、親密な連合関係を築くことができる。そういうリーダーこそ、これからの時代にはふさわしいと指摘する学者もいるという。

 ビビらない技法を身につけて、自信をつけるのもよいだろう。しかしありのままの自分を受け入れて、精一杯、できることを丁寧にやっていく。そんな生き方もいいのではないだろうか。本書のタイトルは「ビビらない技法」であるが、それだけでなく、自分と向き合い、よりよい人生を送るための指南書でもあるのだ。

文=水野シンパシー