お局様の「女王様気取り」には理由があった。女王蜂症候群って知ってる?

ビジネス

公開日:2018/11/24

『面倒くさい女たち』(河合 薫/中央公論新社)

「女って面倒くさい」と思ったことはないだろうか? または、誰かがそう言っているのを聞いたことはないだろうか? 世の中の「女は面倒くさい」論は、もはや定説となっているように思える。だが実は、女が面倒くさいのには、いくつかの“笑えない理由”が隠されているという。

『面倒くさい女たち』(河合 薫/中央公論新社)は、職場や社会にはびこる「面倒くさい女たち」を実証研究や理論などから紐解く1冊だ。

■個人の評価でなく、「女だから…」と決めつけてしまう組織の問題

「女は数学に弱い」「女は地図が読めない」「女は自尊心が低い」…などという話はよく聞く。だが近年は、心理学的にも脳科学的にも「男女の違いはない」という研究結果が多く出ている。ではどうして、女は面倒くさいと扱われるのだろうか?

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 実は、女性の「数」がその原因にある。日本の職場は現状まだまだ「男社会」である。特に階層社会の上位では、女性は紅一点になりがちだ。それゆえ、仮にその場にいる女性にダメな部分が見つかると、個人の能力うんぬんではなく、少ない事例を挙げて「女性だから」という括り方をされてしまう。

 たとえば男性の場合であれば「◯◯くんはコミュニケーション能力が低い」「◯◯くんはリーダーシップが取れない」などと、個人の能力が問題視される。一方で女性の場合には、「女性はわがまま」「女性は自立心が低い」というように、ごく限られたケースだけを対象にしているにもかかわらず、“女性”全体の問題であるとみなされる。

■女性ボスやお局様の「女王様気取り」には理由がある

 面倒くさい女性を作り上げているもうひとつの原因が、「ジェンダー・ステレオタイプ」という問題である。たとえば、「女性は優しいものだ」という一般的なステレオタイプから外れて、自分の意見を主張する女性がいると、「強い女」というレッテルを貼られてしまう。

 女性に厳しい眼差しを向けるのはなにも男性だけではない。世間では「女性上司は女性部下に厳しい」ともよく言われる。

「女王蜂症候群(クイーンビー・シンドローム)」という言葉は、女性の上司が抱く「他の女性の活躍を快く思わない心情」と定義される。今よりもっと女性への風当たりが強かった時代に、男らしく振る舞い、出世のために他のいろいろなものを手放し、高いポジションを手に入れた女性上司たち。それゆえ、今の若い世代が苦労もなく手にした「働く女性の権利」に対してもやもやする。「今の若い子たちがうらやましい」と思う一方で、「私は苦労してきたのに」という思いから、女性部下に対して当たりが強くなるのだ。

■女性の会議は長くなる。その解決法は?

 会社で活躍する女性に関しては、もうひとつ有名な言説がある。それは「女の会議は長い」というものだ。著者はこう述べる。

“男と女に違いはない”と断言してきましたが、実はひとつだけ違いがあります。

 それは「する(do)男」と「いる(be)女」の違いで説明できるという。男性は他者と何かを「する(do)」ことで、女性は他者とともに「いる(be)」ことで、自分の存在を確立している。

 女性が仕切る会議は長い。その理由は、女性は、女性のまえでも「はっきりモノを言う(このときのdo)」ことをおそれ、「ともにいる(be)」に身を委ねているからだ。すぐに終わりそうな議題に何時間もかける。男性は「解決」をゴールにするが、女性は「共感」をゴールにする。女子会を開いたり、女性同士連れ立って行動したりするのもそのせいだ。女性が共通の知り合いの悪口を言って仲良くなるのも、共感して安心したい感情からだ。「共感」の雰囲気を突破するのが難しいために、会議がだらだらと長くなってしまうのだ。

 女性が仕切る会議をうまく機能させるには、男性部下のがんばりも必要だという。「部長、どうですか?」と意見を聞き、「僕はこう思いますけど、みなさんはどうですか?」と進める方向を示すとよい。

「女って面倒くさい」説の背景には、社会や組織での生きづらさがある。そう理解すれば、会社でがんばっている彼女たちへの見方が変わったり、付き合い方も工夫できたりするのではないだろうか。本書は、社会で一層活躍したいと願う女性たちだけでなく、女性の扱いに悩んでいる男性にもぜひ手に取ってほしい1冊である。

文=ジョセート