人前での食事が恐怖…誰かと一緒だと食べられない“会食恐怖症”を克服するために
公開日:2018/11/28
人前で食事すること(会食行為)に対して、耐えがたい不安や恐怖を感じてしまう「会食恐怖症」を知っているだろうか。あまり耳慣れない言葉だが、深刻な症状を伴うこの心の疾患に悩まされている当事者たちがいる。会食恐怖症になると、会食の場面で吐き気、めまい、動悸のほか、食べ物が飲み込みにくくなる、手足の震え、緘黙(かんもく。黙り込んでしまう)などのさまざまな症状が現れる。
この症状を自力で克服した経験を持ち、現在、年間のべ1000人を超える会食恐怖症の当事者の克服をサポートするカウンセラーの山口健太氏の『会食恐怖症を卒業するために私たちがやってきたこと』(内外出版社)出版記念読書会が東京・日本橋で開催された。
当事者約50名で満席となった会場。イベントは『会食恐怖症を卒業するために私たちがやってきたこと』をテキストとして、山口さんが会食恐怖症を克服するためのポイントを解説しながら、参加者の質問に回答。参加者同士が交流するための時間も設けられた。
「『本当に、自分以外にも会食恐怖症で悩んでいる人がいるんだ』と実感した」と話すのは、読書会に参加した石田真由子さん(仮名)。会の終了後には会場で知り合った他の参加者たちとお茶会を開き、お互いの症状や悩みを打ち明け合うことができたそう。他にも「同じ不安を抱える人と話すことで自分を客観的に見ることができた。『みんなと一緒に食事の練習がしたい』、『まだ帰りたくない』と自分がこんなことを思うなんて」との充実の声があがり、当事者同士が笑顔で語り合う様子が見られた。
山口さんによれば、会食恐怖症は完食の強要などが原因となって発症するケースも多いという。一般社団法人日本会食恐怖症克服支援協会が行ったアンケートでは、当事者の62.5%が学校や家庭での完食指導をきっかけに会食恐怖症を発症したと回答しているが、会食恐怖症はまだまだ認知度が低く、周囲の理解を得られていないのが現状だ。そのため、症状を抱える当事者たちは社会に居場所を見つけにくく、生きづらさを抱えながら生活している。
「克服の方法をしっかり伝えることで、会食恐怖症に悩んでいる方々をサポートしたい。ひとりでも多くの方に関心を持っていただくためにも活動を続けていきます」と山口さんは語っている。
出版記念読書会はその後大阪、名古屋と開催され、12月2日(日)には福岡での開催が予定されている。いずれの会場も満席となっており、現在はキャンセル待ちの状態だという。「もしかして自分も…」と心当たりがあるならば、まずはこの本を手にとって突破口を見出してほしい。
文=野呂圭