イライラ、ムカムカした時は…。「怒り」を抑えるために覚えたい“アンガーマネジメント”とは?

暮らし

公開日:2018/11/28

『アンガーマネジメント入門』(安藤俊介/朝日新聞出版)

 夜な夜な飲み屋へ出かけると、酒の力を頼りに店員や隣り合った客へ怒鳴り散らす人をたびたび見かける。若い人を捕まえてこれみよがしにキレ始めるオッサンを見ていると「いい年して何やってんだか…」と、こっちの酒もまずくなるような気持ちに苛まれてしまう。

 とはいえイライラやムカつきといった、いわゆる「怒り」の感情は誰しも多かれ少なかれ持っているはず。これをコントロールしようというのが「アンガーマネジメント」と呼ばれる方法だ。怒りは「マイナスな結果を引き起こす原因となりがち」だと解説する本『アンガーマネジメント入門』(安藤俊介/朝日新聞出版)は、「怒らない技術」を伝えてくれる一冊である。

◎怒りは自分で選んでいる。上手く活かすのがコツ

 例えば、街中で誰かと肩がぶつかった場合。余裕があるときは怒らなくて済むはずなのに、待ち合わせに遅刻しそうとか直前に誰かとムシャクシャするような出来事があった場合には、相手に対してムッとしてしまうときもあるはずだ。

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 状況に応じたこの差を自覚するのがじつは、アンガーマネジメントの出発点。まずは「『誰か』や『何か』によって怒らされているのではなく、私は自分で『怒る』を選んでいる」と認めるのが大切なのだという。

 また、怒りのデメリットというのは「怒りのままに行動してしまうこと」にほかならない。喜怒哀楽といった感情を考えると、怒りはとりわけ大きなエネルギーを消費する場合も多々ある。使い方を間違えると冷静さを欠いたり、思わぬあつれきを生み出したりしかねないが、せっかくなら生まれたエネルギーを上手く「目的達成」や「有意義な方向」に活かせば、好機につなげることもできる。

◎怒った瞬間に使いたい「ストップシンキング」と「グラウンディング」

 怒りの感情が湧いてくるのは、人間であれば仕方ない。ただ、その瞬間に爆発させてしまっては自分にとっても、向き合う相手にとっても損が生じかねない。そんなとっさの場面で役立つ、怒りのコントロール術を紹介していきたい。

・ストップシンキング

 文字どおりであるが、極端に言ってしまえば怒りが湧いた時点で「思考を止めてしまう」ということだ。例えば、何かを言われてムッとした場合を考えるとじつは、頭の中では相手の言葉を受けてその意味を考えたあとに怒りが芽生え、思わず言い返してしまうという細かな段階を踏んでいる。

 この途中にある「意味」を考えないというのがこの手法。いったん頭のスイッチを切るようなイメージで、空白の時間を作れば反射的に言い返すのを防げるし、冷静に考えられる時間も生まれるはずだ。

・グラウンディング

 日頃から馬の合わない人に何かを言われた場合、その瞬間の一言が原因というよりも“なんでこの人にこんなこと言われなきゃ…”という思いから、怒りが急に込み上げてくるときもあるはずだ。そんなときに使えるこの手法は、別のものに自分の注意を向けて気をそらすというやり方だ。

 考えることは、どんなにくだらないものでもかまわない。例えば、目の前にペンがあるのならば「このペンは何色ですか?」「どこのメーカーのものでしょうか?」と自問自答してみる。落ち着くまで繰り返すことで、その後の会話を冷静に交わせるような間を作ることができる。

◎怒りが続いているならば「タイムアウト」で冷静さを取り戻す時間を作る

 先ほどのやり方でも、怒りが収まりきらない。そんなときにやるべき究極の対処法が、タイムアウトという手法だ。手を変え品を変え何かをやっても、怒りが続いたままの場合にしばらくその場から離れて、頭を冷やすという“開き直り”とも取れるやり方であるが、じつは、きちんとしたルールがある。

 例えば、怒りが続いているからといって黙って立ち去ったり、捨て台詞を吐いていなくなったりするというのはご法度。まずは相手に「これ以上は冷静に議論ができそうにありません」などと前置きをして一度離れてから戻ってくることを宣言したあと、話を再開するのを告げるのが正しいやり方だ。

 この方法の一番のメリットは、冷静さを取り戻せるということ。強い怒りの感情を持ったままでは、何かを話し合ったとしても建設的な方向に進まない可能性の方が大きい。そのため、多少の時間を置いてでも、よりよく話し合える環境を作るのがよいという。

 本書ではこれら以外にも、さまざまな怒りのコントロール術が紹介されている。感情を爆発させるというのは悪いことばかりではないが、いかなるときもイライラやムカつきを抱えているのは考えもの。自分に当てはまる人はもちろん、身近にそんな人がいる場合にもぜひ役立ててほしい。

文=カネコシュウヘイ