三島由紀夫『春の雪 豊饒の海(一)』あらすじ紹介。皇族の婚約者を妊娠させてしまう、幼馴染の禁断の恋
更新日:2023/7/12
『豊饒の海』は三島由紀夫生涯最後の長編大作。「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」の全4巻で構成される、輪廻転生をテーマにした物語。禁断の恋、右翼思想、官能的美女、悪魔的少年を魂が巡る。本作の完結直後に三島は、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地に乗り込み割腹自殺。日本史に残る「三島事件」を起こした。
・『春の雪』あらすじ
物語の舞台は明治末期から始まる。左の脇腹に3つのほくろがある主人公、清顕(きよあき)は華族の家に生まれ、幼少期はさらに位の高い家系に当たる綾倉家に預けられて育った。その綾倉家には清顕より2歳上の聡子という一人娘がいて、彼らは姉弟のように育てられた。
清顕にとって聡子は、幼馴染であり、姉のようでもあり、そして初恋の相手とも言えるような存在だったが、やがて10代後半という繊細な年頃を迎えた彼は、聡子に対して突き放したような態度をとるようになる。しかし実は清顕が気付いていないだけで、聡子は彼のことを深く恋慕していた。
清顕に突き放された聡子は傷つき、殿下と婚約する。そこで清顕は聡子のことを恋しくなってしまう。しかし聡子はもはや皇族の婚約者。禁断の恋と分かっていながら、清顕と聡子は逢瀬を重ねるようになる。
親友である本多の協力もあり、清顕と聡子は密会を続ける。そして聡子は妊娠してしまう。これにより清顕と聡子の関係が両家に知れ渡ってしまった。聡子は強制的に堕胎させられ、月修寺という寺に自ら出家する。
春の雪が降る2月の暮れ。清顕は聡子と面会するため月修寺に行くが、聡子は拒絶して出てこない。彼は聡子を一目見るために雪の中で待ち続け、そのせいで肺炎をこじらせて死ぬ。まだ20歳だった。死ぬ直前、清顕は本多に対し「滝の下でまた会う」と、転生して再会する約束をした。
文=K(稲)