脚本・鳥山明であの最強ライバルが蘇る!『ドラゴンボール超 ブロリー』
公開日:2018/12/6
12月14日より劇場版『ドラゴンボール超 ブロリー』が全国公開される。劇場版アニメ20作目にあたる本作は、原作者の鳥山明が脚本とキャラクターデザインを手がけ、壮大なスペースオペラとなっている。新たに描かれる伝説の超サイヤ人“ブロリー”とは何者?
12/14(金)公開!
原作・脚本・キャラクターデザイン:鳥山 明 監督:長峯達也 作画監督:新谷直大 音楽:住友紀人 美術監督:小倉一男 色彩設計:永井留美子 効果:太田 直 CGディレクター:牧野 快 声の出演:野沢雅子、堀川りょう、中尾隆聖、島田 敏ほか
3人のサイヤ人の運命が交錯するスペースオペラ
映画のタイトルにもなっている「ブロリー」とは、1993年公開の劇場版第11作で初登場し、悟空を圧倒した“伝説の超サイヤ人”である。第13作で再登場し、悟飯と激戦を繰り広げた。作品自体は少ないものの「最強のサイヤ人」として強烈なインパクトを残し、知る人ぞ知る人気キャラだった。
もともと鳥山明が「とんでもなく強いサイヤ人」をイメージしてデザインしたキャラクターだが、当時はアニメにほとんどノータッチだったため、すっかり忘れていたそうだ。本作を作るにあたり、過去作を見直したところ、「アレンジ次第では、かなりおもしろくなりそうだ」と感じ、原作者自身の手によって、ブロリーの誕生から現在に至るまでが、新たに描き直されることになった。
悟空とベジータというサイヤ人同士のライバルに、ブロリーという謎めいたサイヤ人が加わり、「スペースオペラ」をテーマに脚本を練ったという。それは、サイヤ人の歴史の物語だ。
3人は同じ時期に生まれ、それぞれ違う運命を辿ったが、フリーザ軍によって故郷の惑星ベジータが壊滅。復活したフリーザも巻き込み、サイヤ人の数少ない生き残りとなった3人が壮絶なバトルを繰り広げる。最強のサイヤ人は誰なのか──これは見逃せない!
鳥山明が原案を手がける『ドラゴンボール超』とは?
『ドラゴンボール』の連載が終了したのは1995年のこと。翌年、テレビアニメ『ドラゴンボールZ』も最終話を迎えたが、即座に続編の『ドラゴンボールGT』が始まった。
90年代までに劇場版も第17作まで作られていたが、その頃の鳥山明は「劇場版と原作マンガは別物」というスタンスを取っていたため、映画との関わりは極めて少なかった。
ところが、2013年公開の『ドラゴンボールZ 神と神』で、初めて鳥山明が脚本の段階から深く関わったのだ。魔人ブウを倒し、宇宙最強となったはずの悟空を超越した「破壊神ビルス」という新次元の最強キャラが登場し、戦いはついに神々の領域に突入した。
続く15年公開の『ドラゴンボールZ 復活の「F」』では、鳥山明が単独で脚本を担当し、あの宿敵フリーザが復活! さらに鳥山明が関わった劇場版の設定と連動したテレビアニメ『ドラゴンボール超』が、同年夏からスタートした。最新作『ドラゴンボール超 ブロリー』は、初めてタイトルに“超”が付く劇場版なのだ。
原作者による続編が楽しめるなんて、ドラゴンボール世代にとっては至福の喜び。『ドラゴンボール』は今なお進化し続けている!
2013年公開 第18弾『ドラゴンボールZ 神と神』
宇宙を危機に陥れた魔人ブウすら超える脅威が地球に! 破壊神ビルスが夢で見た「超サイヤ人ゴッド」を探すため、ブルマの誕生パーティーに現れたのだ。次元が違う強さを誇る破壊神ビルスに悟空の力は通用するのか⁉
(c)バードスタジオ/集英社 (c)「2013 ドラゴンボールZ」製作委員会
2015年公開 第19弾『ドラゴンボールZ 復活の「F」』
宿敵フリーザがドラゴンボールによって復活! 悟空に復讐すべく、生まれて初めてトレーニングをしたフリーザが、さらなる進化形態「ゴールデンフリーザ」に変身し、悟空、ベジータと一進一退の攻防を繰り広げる!
(c)バードスタジオ/集英社 (c)「2015 ドラゴンボールZ」製作委員会
シリーズ屈指の人気ライバル ブロリーとは?
ブロリーは1993年公開の『ドラゴンボールZ 燃えつきろ‼ 熱戦・烈戦・超激戦』で初登場した。一見、無口なやさ男だが、「伝説の超サイヤ人」に変身すると、南の銀河を壊滅させるほどの破壊力を持つ。悟空に敗れ、死んだものと思われたが、94年公開の『ドラゴンボールZ 危険なふたり!超戦士はねむれない』で復活し、悟飯を窮地に陥れた。ゲームで最強クラスのキャラとして登場し、海外でも高い人気を誇っていた。
『ドラゴンボール超 ブロリー』推薦インタビュー
孫悟空役 野沢雅子
悟空は、私にとって「分身」みたいな存在
『ドラゴンボール』がテレビアニメ化された1986年から悟空の声を演じ続ける声優界のレジェンド・野沢雅子さんにとって、悟空はどんな存在なのだろう?
「悟空は私の分身みたいなものですよね。性格も似てるんですよ。悟空って、人にどう思われるかってくよくよ気にしないじゃないですか。私も同じで、人様に迷惑さえかけなければ、人にどう思われても気にならない。30年以上、悟空を演じてきて、もう一心同体ですからね。常にそばに悟空がいて、いつでも私の中に悟空が入ってきてくれるような感じなんですよ。スタジオに入るときは、悟空になっちゃってますから(笑)」
映画『ドラゴンボール超 ブロリー』収録の感想を聞くと、とりわけ戦闘シーンが印象深かったそうだ。なにしろ歴代のライバルの中でもブロリーは史上最強クラス。バトルにも熱が入る。
「とにかく戦いの連続で、ウワーッて叫び続けた記憶が一番残ってます。収録の後、ブロリー役の島田敏さんが叫びすぎてグッタリしてるから、大丈夫?って背中をさすってあげましたからね。あれだけ叫び続ければ、疲れるのもわかりますよね。でも、私は毎週テレビアニメの収録で慣れっこだから、いつもよりちょっと大声を出したなっていうくらいで、大丈夫なんです。疲れを感じたことがまったくなくて、疲れるってどういう感じ?って思うほどですから(笑)」
戦いを通して「仲間」になっていく
80カ国以上で放映され、世界中で愛される悟空の魅力を、野沢さんはどう感じているだろう?
「悟空は相手が憎くて戦ってるわけじゃないんですよね。そんなことしちゃダメだよって、平和にするために戦うんだけど、相手の力が強いから、自分も腕を磨くために修業する。だから、悟空に〝敵〟っていう意識はないんですよね。戦いが終わったら友だち。そんな悟空が大好きです。悟空に触れることで、ピッコロやベジータも変わっていきましたよね。最初は、なんてイヤな人なんだろう……と思っていたけど、今はちょっと仲間みたいでしょ(笑)」
強敵のブロリーにしても、悟空に出会ったことで、また違う一面を見せてくれるかもしれない。
戦いが終わったら友だち。
ブロリーとの関係も変わってくると思います
「ブロリーは不思議な人ですよね。根っからの悪人でもなくて、どこか憎めない。いい部分をいっぱい持ってるんだけど、それを表に出せないだけで、悟空と関わっていくうちに、元々持っていたものが自然と出てきて、二人の関係もまた変わってくると思いますね。悟空もいろんな人と出会って、もっともっと大きな人間に成長してほしいなって思いますね」
のざわ・まさこ:声優。1963年にアニメデビュー。1968年に『ゲゲゲの鬼太郎』で初主演。代表作に『銀河鉄道999』『いなかっぺ大将』『ドラゴンボール』など多数。
漫画 とよたろう
新たな描き手と鳥山明が紡ぐ、『ドラゴンボール』のその後
『Vジャンプ』にて『ドラゴンボール超』(鳥山明:原作)を連載するとよたろうさんは、子どもの頃から鳥山明の絵を模写していたそうだ。その絵柄や画面構成の再限度を認めた、集英社からの大抜擢でカードゲーム『ドラゴンボールヒーローズ』のマンガで見事、連載デビューを果たした。
さらに2015年公開の劇場作品『ドラゴンボールZ 復活の「F」』のコミカライズをきっかけに、鳥山明原作による『ドラゴンボール超』の連載という大役を射止めた。幼い頃から大ファンだった『ドラゴンボール』の続編を自分が描くことは、まさに青天の霹靂といえよう。
「僕は鳥山先生の弟子というわけでもなく、ただ好きで描いていたファンの一人で、自分より似せて描ける人もいるかもしれないし、戦闘シーンやギャグを もっと上手く描ける人もいるかもと思うんです。
もちろん1番でいれるように努力しなくてはと思っているのですが、まだまだ成長途中の僕に続きを描かせてくれるなんて、すごく光栄なことなんですが、冷静に考えるとプレッシャーで描けなくなるので、なるべく考えないようにしてます(笑)」
マンガ版の『ドラゴンボール超』では、悟空やベジータたちが、別宇宙の強敵たちと戦いを繰り広げる姿を描いてきたが、同じ『ドラゴンボール超』に登場するサイヤ人として、今回の劇場版の主要キャラ「ブロリー」をどう思っているのだろう?
「ブロリーは昔から大好きなキャラでした。90年代の劇場版で初登場したとき、とりあえずスーパーサイヤ人というだけで、子どもたちは無条件で好きになったと思うんです。やっぱり〝最強〟というのが一番の魅力ですよね。昔からずっとブロリーを描いていたので、やっぱりブロリーは描いてみたい。立ち姿だけで絵になるキャラだから、マンガに登場したら、すごく魅力的になると思います」
過去を背負ったブロリーは特別な敵キャラだった
強さだけでいえば他にも魅力的なキャラは大勢いるけれど、中でもブロリーは異色の存在だ。なぜこんなにもブロリーは人気が高いのだろう?
「あらためて分析すると、過去を背負っていることに惹かれていたんでしょうね。ぽっと出の敵役と違って、ブロリーは悲劇的な境遇の中でめちゃくちゃ強くなったという過去が描かれていて、特別な印象でした。今回の劇場版で、ブロリーを使って鳥山先生がストーリーを作ることになり、結果として、サイヤ人とフリーザの因縁の始まりから現在まで全部つなげることができたので、すごく意義のある映画だったと思います」
今回の劇場版では宿敵フリーザがまたもや復活を遂げている。『ドラゴンボール超』の「宇宙サバイバル編」でドラゴンボールによって甦ったのだ。劇場版は『ドラゴンボール超』の“その後”という位置づけになっている。
「フリーザは悪の親玉として特別な存在ですよね。未来から来たセルや、過去から甦った魔人ブウがいくら強かったとしても、彼らのバックボーンというのはあまり描かれていないですよね。それに比べると、フリーザはサイヤ人が滅びた歴史に関わっていて、さすがは現役の悪の親玉ですよね。『宇宙サバイバル編』で悟空の仲間になるんじゃないかとみんな期待したと思うんですけど、劇場版ではやっぱり敵として出てくる。悪であることを徹底しているのが、フリーザの魅力なんですよね」
“最強”であることが一番の魅力。
ブロリーは昔から大好きでした
鳥山明の原作を起点に『ドラゴンボール』はテレビアニメ、ゲーム、劇場版、そしてとよたろうさんが描く続編マンガなど、世代を超えて広がり続けている。「サーガ」を思わせる広大な世界観が、さらに『ドラゴンボール』を面白くしているのだ。
「もちろん原作が一番好きですけど、アニメもゲームも全部好きです。子どもの頃からファンだった世代が、思い入れを込めてアニメやゲームを作ったり、マンガを描くようになって、みんなで『ドラゴンボール』の世界観をつくっているという感覚が僕の中にあるんですよね。僕も求められる限り、『ドラゴンボール』を描き続けていきたいです」
とよたろう●2012年に『ドラゴンボールヒーローズ Victory Mission』でデビュー。15年に『ドラゴンボールZ 復活の「F」』の読切り作品を経て、『ドラゴンボール超』を連載中。
文=大寺 明 写真=河内 彩