『このライトノベルがすごい!2019』は、史上最大の番狂わせ!? 人気躍進のキーワードは「多様性」

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公開日:2018/11/30

『このライトノベルがすごい!2019』(『このライトノベルがすごい!』編集部/宝島社)

 いまが旬のライトノベルを紹介するライトノベル総合情報誌『このライトノベルがすごい! 2019』(このライトノベルがすごい!編集部/宝島社)が11月24日に発売された。

 本誌は、読者アンケートによる人気ランキングに加え、人気作家やイラストレーターへのインタビュー、ジャンル別作品紹介ガイドなどを掲載し、ライトノベルの流行を読み解く際の必読書となっている。

 注目の人気ランキング「文庫部門」では、「このラノ」史上最大の番狂わせが起きた。

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 ライトノベルファンによる下馬評では、前年度で2年連続首位の座にある、今年の春期にアニメ放送もあった『りゅうおうのおしごと!(GA文庫)』(白鳥士郎/SBクリエイティブ)が大本命といわれており、3連覇が期待されていた。

 しかし、そんな周囲の予想を超え、今年度の「文庫部門」では、本誌初登場の新作『錆喰いビスコ(電撃文庫)』(瘤久保慎司/KADOKAWA)が総合&新作1位の栄冠に輝いた。

『錆喰いビスコ』は、第24回電撃小説大賞≪銀賞≫受賞作。兵器の暴走で荒廃した未来の日本を舞台にしたポストアポカリプスSF作品。主人公・赤星ビスコは、≪錆び風≫によって肉体を蝕まれた師匠のジャビを救うため、医者の少年・猫柳ミロとともに霊薬キノコ≪錆喰い≫を求め、異形の怪物や世界支配を企む巨悪に立ち向かっていく。

 2018年3月に第1巻発売。8月10日に第2巻が発売されたばかりの新作だ。作者はデビュー1年目の快挙だった。昨今のライトノベルの主人公では珍しい、少年漫画に登場するような熱血漢のヒーロー像が読者の心を掴んだと思われる。

 その他にも、ランキングトップ10には、現在アニメ放送中の大人気作品『ソードアート・オンライン(電撃文庫)』(川原礫/KADOKAWA)、『とある魔術の禁書目録(電撃文庫)』(鎌池和馬/KADOKAWA)などの常連組を押しのけ、初登場の新作がいくつもランクインした。

 そのひとつ、『ひげを剃る。そして女子高生を拾う。(角川スニーカー文庫)』(しめさば/KADOKAWA)は、失恋したばかりの20代のサラリーマン男・吉田が家出中の女子高校生を拾い、同居生活を通して恋愛観や人生観、人間関係を見つめ直していくヒューマンラブストーリー。

 続く、『三角の距離は限りないゼロ (電撃文庫)』(岬鷺宮/KADOKAWA)は、二重人格のヒロイン・水瀬秋玻に恋した主人公が、彼女のもう一人の人格・春珂に恋を応援されながらお互いの心の距離を縮めていく青春恋愛物語。

 こちらの3作品については、作者インタビューあるいはコメントが掲載されている。

 ここで紹介した作品以外にも、多くの新作が人気躍進を見せた。併設されている「単行本部門」ランキング、巻末のライトノベルジャンル別ガイドなども、作品選びのよい参考になるだろう。

 近年のラノベ市場では、異世界ファンタジー作品が隆盛を見せていたが、昨年あたりから各出版社の主催する新人賞には現代もの、SFジャンルの作品が多く受賞するようになり、今回の「文庫部門」ランキングからも読者の「多様化」が見えてくる。とはいえ、「単行本部門」では、異世界ファンタジー作品の人気は衰え知らずで、文庫本と単行本で読者の棲み分けがより明確になりつつある。このまま分岐していってしまうのか、今後の動向が気になる。

『このライトノベルがすごい!』編集部からダ・ヴィンチニュース読者の皆さまへ

 いまの世の中は急速に「多様性」が認められるようになってきています。そんな中で「ライトノベル」もレーベルやジャンルといった枠組みを越えた拡散と浸透を繰り返しながら、どんどんと多様化していっています。近年の傾向から、「文庫部門」と「単行本・ノベルズ部門」を設けていますが、一緒のように見えて読者層が大きく異なっています。

 この他にも「ライト文芸・キャラ文芸」と呼ばれる作品群や、現代における「少女小説」は女性向けライトノベルとなっています。アダルトな内容を扱った「ジュブナイルポルノ」にまで目を向けると、作品数は膨大な数に上り、読者も多種多様です。

 そんな多様化するライトノベルの中からある程度作品群を絞り、ランキングに上がってきたものを紹介するのが『このライトノベルがすごい!』です。ランキング結果だけでなく、300作以上ある作品ガイドや、著者に深い話を伺っているインタビューなども楽しんでいただければ幸いです。

文=愛咲優詩