「年齢はただの記号」というフレーズを耳にすることはあるが、結婚適齢期の女性にとって年齢は記号ではない。特に、30歳というひとつの節目を迎えると、未婚女子は焦りを感じ、婚活やマッチングサイト、結婚相談所などを利用して生涯のパートナー探しに励みたくなる。

　しかし、パートナー探しをしながらも心のどこかでは「努力していればきっといつか誰かが自分のいいところに気づいてくれて結婚できる」と思っている方は意外に多いのではないだろうか。そんな“運命の人神話”を見事に打ち砕き、失敗しない婚活法を教えてくれるのが『30婚　miso－com』（米沢りか/講談社）だ。

　飲食店のコンサル会社で働きながら、一人前のフードコンサルタントを目指している主人公・野呂笑は仕事で知り合った彼氏・タカヒロが「結婚しよう」と言ってくれないことに悩んでいた。

　笑の理想は綺麗な庭園がある高ランクのホテルで結婚式をしたり、誕生石があしらわれた大粒の指輪をもらったりすることであったため、彼を急かして急ごしらえの結婚式をするつもりはなかった。

　だが、ある日、いとこの結婚式に参加した笑はタカヒロがそもそも自分と結婚する気があるのか不安に思い、賭けとして別れを切り出すことに。すると、彼はすんなり去っていってしまった。それから数ヶ月後、タカヒロが別の女性とスピード婚したと知った笑は、それを機に婚活に励みながら自身の結婚観と本気で向き合うようになっていく。

「出会った瞬間に“この人だ”と分かるような自然な出会いで運命の人と巡り逢いたい」笑のこの言葉に共感する婚活女子は多いかもしれないが、出会いを待つだけの「待受女」のままでは未来に繋がる恋を得ることは難しい。近年は恋愛に消極的な草食系男子も多いといわれているため、少女漫画のヒロインのように、ただ待っているだけでは恋のチャンスを逃してしまう。

　恋愛の縁は他人同士がお互いに興味を示したときに生まれるものだからこそ、将来に繋がる出会いが欲しいのであれば、白馬の王子様がやってくるのを待つのはやめ、自らの足手で王子様を探しに行く必要がある。

「私は結婚をしたいのか、理想の結婚式がしたいのかどちらなのだろう…」そんな問いを心に芽生えさせてもくれる本作は、いつの間にか結婚がゴールだと思ってしまっている独身アラサー女子にぜひ手に取ってほしい1冊だ。

文＝古川諭香