三島由紀夫『奔馬 豊饒の海(二)』あらすじ紹介。もしも親友の生まれ変わりと出会ったら

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更新日:2023/7/12

『豊饒の海 第二巻 奔馬 (新潮文庫)』(三島由紀夫/新潮社)

『豊饒の海』は三島由紀夫生涯最後の長編大作。「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」の全4巻で構成される、輪廻転生をテーマにした物語。禁断の恋、右翼思想、官能的美女、悪魔的少年を魂が巡る。本作の完結直後に三島は、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地に乗り込み割腹自殺。日本史に残る「三島事件」を起こした。

・「奔馬」あらすじ

 春の雪の中で聡子を待ち続けた清顕が死んでから18年が過ぎた。本多は38歳になり、裁判所で判事を務めている。

 本多が剣道の試合を見に行くと、竹刀の使い方がとても美しい18歳の勲(いさお)という少年を見かける。その後、本多は神聖な滝の下で勲と偶然再会する。勲の脇腹には3つのほくろがあり、本多は彼こそが清顕の生まれ変わりであると思い至る。

 勲は華族の腐敗に怒り、剣で日本を浄化しようと「純粋な結社」を結成していた。彼は父親が主宰する右翼塾にも財界との癒着があることを知り、失望する。

 山梨の川で本多は、勲が白衣の男たちに鎮魂されている姿を見る。「お前は荒ぶる神だ」と父に言われている光景は、清顕の夢日記に書かれたものと同じ。勲は清顕の生まれ変わりなのだと、本多はさらに確信する。

 要人の刺殺計画を練っていた勲は、密告により逮捕されてしまう。本多は弁護士となり勲の刑を軽減させた。その後、勲はかつてのターゲットが伊勢神宮で不敬を犯したことを知り、暗殺に向かう。その前に、酒に酔った勲は本多に向かい「暑い南の国で」と不思議な寝言を言う。

 勲はターゲットの別荘に侵入して短刀で殺害。現場から逃げた勲は、夜の海の崖で切腹自決を遂げたのであった。

文=K(稲)