皆川猿時「松尾スズキさんが、あと10年は元気でいられるよう、あったかいオーラとパワーをふりかけてください(笑)」
公開日:2018/12/9
毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、大人計画30周年記念イベント「30祭(SANJUSSAI)」に参加、大いに盛り立てる、皆川猿時さん。大人計画ファン垂涎の、一大イベントの見どころとは?
「このマンガに救われていた人、きっと、たくさんいたんだろうなぁ」
この日、家から持参してきてくれた、狩撫麻礼『天使派リョウ』は、年季が入ってイイ感じになっていた。
「世間の常識にとらわれず、自由に生きている人たちがたくさん出てくるんですけど、そのなかに、大山くんという、すっごく気弱で静かな人が出てくるんですね。その彼が、酒を飲んだとき、急に自分はボクサーになりたいと告白するんです。すると、奥さんの加世さんが、こっちが大山くんの本当の人格で、気弱な彼は第二の人格だ、みたいなことを話す。そのエピソードを読み、人間ってそういうとこ、あるんじゃないかなぁって感じたんです。普段は穏やかだけど、怒るとものすごく怖いとか、強面だけど実は優しいとか、人ってひと括りには判断できない。描かれているそうしたことに、僕は当時、どこかで救われていたところがあります」
『迷走王ボーダー』『ハード&ルーズ』『ルーズ戦記 オールドボーイ』……狩撫麻礼の作品に次々と触れていた頃は、役者を目指して上京し、東京乾電池の研究生となったその後、オーディションを受け、松尾スズキ率いる大人計画に入った時期と重なる。
「その大人計画が今年は30周年。『30祭(SANJUSSAI)』という記念イベントを開催します!目玉企画『松尾スズキ30周年記念ファミリーコンサート“なんとかここまで起訴されず”』も開催されるけど、僕、ちょうどその日、宮藤官九郎さんが演出する舞台出演のため、地方へ行っているんです(笑)」
大人計画、30年の歴史を写真や映像などで辿る「大人計画大博覧会」、皆川さんが港カヲルとして活躍するロックバンド“グループ魂”の展示、辞めていった劇団員を訪ねる映像企画「宮藤官九郎と伊勢志摩の感動ドキュメント“伝説の先輩を訪ねて”」……12月18日から30日まで、東京・青山のスパイラルは、大人計画に一色に染まる。
「僕は、『名作上映会と愉快なトーク』に出演します。作品は2009年、シアタートラムで上演した『サッちゃんの明日』。この作品は珍しく、僕、モテる役だったんですよ(笑)。鈴木蘭々さんに惚れられる役だったんです。なんか気持ちがどんどん二枚目になっちゃって(笑)。こんな気持ちのいいことあるかなぁって思ったなぁ。ちょっと勘違いした時期すらありましたもん。“鈴木蘭々、俺のこと、好きなんじゃないのか?”って(笑)」
「トークはどうなるか、まったくわからない」と笑う皆川さん。“愉快なトーク”のコーナーではそんな秘話がぽんぽん飛び出してくるのだろう。
「それぞれがいろんな思いを抱えて演っていたと思うんです。小松和重さんは、おばあちゃんの役とちょっと屈折したサラリーマン感じの人の二役を演じたし、猫背椿さんは、すごい衣装を着なきゃいけないみたいな役でした。それそれがキャラクターの濃い役を演じたので、当時を振り返りながら、きっと盛り上がると思います。あのとき、俺はこうだった、私はこうだった、そんな話、自分は初めて聞いた!とか(笑)」
この企画は他にも、阿部サダヲさんが出演する「ファンキー!~宇宙は見える所までしかない~」などの5作品がそれぞれ上映され、トークが開催される。
「松尾さんの原画も数多く展示されます。ここまでの点数が飾られるのも初めてのこと。松尾さん、今、55歳なんですけど、あと10年は元気でいられるよう、観に来てくださる方が、あったかいオーラをふりかけてくださるとうれしい。松尾さんが長生きするもしないも、お客さん次第です(笑)」
(取材・文:河村道子 写真:鈴木慶子)
松尾スズキ+大人計画30周年記念イベント「30祭(SANJUSSAI)」
12月18日(火)~30日(日)スパイラルにて 料金ほか、詳細はhttp://otonakeikaku.jp/stage/2018/30/index.html
●30年の歴史を舞台写真や台本、メンバーの成長記録などで辿る大博覧会、劇団員が神出鬼没に登場する小ステージ、名作上映会と愉快なトーク、宮藤官九郎と伊勢志摩の感動ドキュメント、ファミリーコンサートなど、大人計画を知る人も知らない人も楽しめる一大イベント!