ロバート キャンベルさんも薦める! アメリカで80万部突破の話題の絵本、テーマはLGBT
公開日:2018/12/8
LGBTの人々への理解について、この夏、月刊誌への政治家の寄稿をきっかけに、より活発な議論が巻き起こった。その際、東京大学名誉教授のロバート キャンベルさんは、この言論に対して立場を明らかにした上で意見を述べるため、ブログで自身がLGBTの当事者であることを明かし、LGBTの人々が「ふつうに、『ここにいる』ことが言える社会になってほしい」と記した。そんなキャンベルさんが推薦コメントを寄せる絵本が、この冬、日本にやってくる!
『にじいろのしあわせ マーロン・ブンドのあるいちにち』(マーロン・ブンドとジル・トウィス:著、EGケラー:イラスト、服部理佳:翻訳/岩崎書店)の主人公、ウサギのマーロン・ブンドは、「おじいちゃん」たちと一緒にお屋敷で暮らしている。この「おじいちゃん」とは、アメリカ副大統領のマイク・ペンス氏のこと。そう、マーロンは、アメリカではその名が知られた、実在するウサギなのだ。
お屋敷に住むマーロンは、ひとりぼっちで寂しい日々を送っていた。ところが、ある出会いをきっかけに、彼の生活は一変する。
マーロンは、素敵なオスのウサギ、ウェスリーに出会った。互いが大切な存在だと気づいた彼らは、結婚を約束し、庭の仲間たちに公表した。これにはみんな大喜びだ。「だって ともだちだからね」。ところが──。
リーダーのカメムシは、オス同士で愛し合うマーロンたちの結婚を、「ふつうとちがうのは いけないことだ」と認めようとしないのだ。そこで、マーロンやウェスリー、庭の仲間たちが取った行動とは……。
同性婚に反対するペンス副大統領や、現トランプ政権のLGBT政策をウイットに富んだ形で批判したこの絵本は、アメリカで80万部のベストセラーとなった。扱うのはLGBTという難しくも思えるテーマだが、愛らしい絵とやさしい言葉で綴られる物語を読み進めていくうちに、なあんだ、そんなことだったのか、という気分になる。
マーロンたちの友達は言う、「だれでも ふつうとちがうところは あるでしょ。ふつうとちがうのは いけないことなんかじゃないわ」「すてきなことよ」。
そもそも“ふつう”という概念だって、マーロンたちの友達が言うことしかり、冒頭に引いたキャンベルさんの発言しかり、さまざまなイメージを含む曖昧で豊かなものだ。大切なのは、堅苦しい議論ではない。友人の個性を認め、その幸福を喜ぶこと──いつの時代も、国境を超えてすべての人に当てはまる、たったそれだけのことなのだ。
LGBTの象徴、多様性を示すレインボーフラッグの「にじいろ」を邦題に冠した本作。パートナーや家族と、友人と、そして“ふつう”と向き合う自分とともに、開いてみることをおすすめする。
文=三田ゆき