「皇室」と「皇族」の違いを説明できますか? 池上彰が優しく教える“天皇とは”
公開日:2018/12/23
2019年4月30日に迎える今上天皇の退位により、平成は幕を閉じる。そして翌日の5月1日から新元号が施行されることとなる。だが、私たちは「天皇」についてどれだけ知っているだろうか? 「日本の象徴」の意味とは? 皇室の仕事とは? そもそも天皇とは? 今更人に聞けないという人もいるだろう。だが、新しい歴史を迎えるこのタイミングだからこそ改めて「天皇」を知る良い機会になるのではないか。
『池上彰の「天皇とは何ですか?」』(池上 彰/PHP研究所)では、今だからこそ知りたい“天皇とは?”について、池上氏らしくわかりやすい言葉で解説されている。天皇制について全てを知るには難しいことも理解しなければいけないだろうが、小さな疑問やトリビアをきっかけに知識を深めていくのも良いだろう。
そもそも、「皇室」とは何か、「皇族」との違いを尋ねられたら答えられるだろうか?
「皇室=天皇陛下+皇族」である。宮内庁のホームページには「皇室は、天皇陛下と皇族方で構成されています」とある。よって、天皇は皇族には含まれない。一方、皇族には皇后や親王などが含まれる。
ちなみに、天皇と皇族には「姓」がない。「秋篠宮」「常陸宮」は天皇から与えられる宮号であり、女子が結婚で皇籍から離れ一般国民になるとはじめて姓を持つことになる。皇族の結婚といえば、高円宮家の三女、絢子さんの結婚式が10月に行われたが、結婚後、守谷の姓を持つようになったのは記憶に新しいだろう。
さらに、天皇や皇族と一般国民の違いは、さまざまな自由や権利にまで及ぶ。表現の自由や移動の自由、職業選択、選挙権、被選挙権もない。ただ、15歳以上の内親王、王、女王は、皇室会議の承認を得られれば結婚前でも皇族の身分を離脱できると定められている。一方で、皇族男子は一生、天皇あるいは皇族として生活しなければならない。
さて、いよいよ平成は幕を閉じる。昭和の戦争を経て、平和への希望を託されて始まった平成。それでも世界の動乱、長いデフレ、天変地異に見舞われた。その中で天皇はどういう役割を果たしていたのだろうか。
池上氏は、天皇の「日本の象徴」の役割を強く感じたのが東日本大震災の直後だったという。
「そういう状況の真っ只中で、天皇陛下が国民に“復興への希望”を呼びかけられている。苦難をみんなで分かち合い、希望を捨てずに復興の道のりを歩もうと語られる。それを見て、“ああ、これが天皇の役割なんだ。象徴ということなんだ”ということが直感的にわかりました」
天皇や皇室について知ることは、日本という国を深く知ることである。時代の狭間で今一度、我々がどういう国に住み、どんな思いを共有してきたかを考えたいものだ。
文=ジョセート