純愛なのに超エロい! ヴァンパイアから注がれる“毒”でどんどん淫らに……『催淫毒』2巻
更新日:2018/12/21
敬虔なシスターが美しき吸血鬼の淫らな毒に堕とされる――究極の禁断の恋を描いたマンガ『シスターとヴァンパイア』(暁/白泉社)。純愛なのに超エロいという、大人の恋を楽しみたい読者にはたまらない本作、最新6巻が発売されたばかりだが、あわせて楽しみたいのがスピンオフ作品となる『催淫毒~シスターとヴァンパイア~』。こちらも待望の2巻が発売された。
主人公は両親の遺した教会で働くシスター・アリシア。孤独な彼女の慰みは、幼いころに山で保護した銀色の狼だけ。怪我を手当てする間ともに暮らしたその狼が、再び戻る日を待ち続けていたのだが、この狼の正体がなんと吸血鬼。アリシアを10年も忘れられずにいたという、執念深……もとい一途な彼、アルバートは突然アリシアのもとに現れ、その首筋に牙を立てる。噛み口から注がれるのがタイトルにもある催淫毒。これによってアリシアは、快楽の泉に引きずり込まれてしまうのだ。
最初は、貞淑を誓っていたはずの自分を堕落に導くアルバートへ複雑な思いを抱いていたアリシアだが、彼が真に自分を大切にしてくれているその優しさを知り、次第に心惹かれていく。2巻刊行の今では、身も心もすっかりアルの虜なのだが、これがまた新たな問題を生むのだった。
いわく、感じすぎる。快楽の誘いに、抗うことができなくなっている。
カラダの関係に溺れるのは、交際初期のカップルにはままあること。好きの気持ちが盛り上がりすぎて、どれだけ触れ合っても足りない、なんて経験に覚えのある読者も多いだろう。ましてやアルは10年という我慢を重ねてきているうえ、アリシアは催淫毒を注がれているのだから、なおさらだ。だが同時に、肉欲を愛と錯覚しているのではと思い悩んだり、快楽に引きずられて仕事が疎かになってしまう自分に自己嫌悪を抱いたりするのも、特に恋愛初心者にはありがちなこと。そんなアリシアの初心で、けれど深刻な葛藤から始まる2巻は、2人の関係が深まっているだけに読み応えが増している。
しかも2巻では、厄介な人物も登場する。アリシアが手伝いをすることになる、村の医者だ。着任早々、患者である人妻と情事をかわしているところをアリシアに見つかっても悪びれず、むしろアリシアにも触れようとする。しかも彼の指先に“感じて”しまったアリシアは、淫らになった己の体におびえ、相手は誰でもよいのかと自己嫌悪に苛まれる。肉欲なんて愛を耳心地よく言い換えただけだという彼に、果たして今後、アリシアとアルは自分たちの愛を証明していけるのか? そして互いに、自分たちの想いを信じていけるのか。今後の展開も期待大。
ちなみに巻末収録の、1巻で登場したあの神父が吸血鬼の少女に堕とされていく番外編も、エロかわいくて最高だった。そして本作とは関係ない、25歳OLと19歳ピアニストの恋を描いた短編も。
ただエロいだけの物語に読者は(特に女性は)興奮しない。肉欲と愛情は切り離せないからこそ、背徳が、常に恋愛を淫らに盛り上げてくれるのだ。その醍醐味を存分に味わえる作品である。
文=立花もも