2007年にニュースになった、中国産「段ボール肉まん」は実在していた!?

社会

公開日:2018/12/17

『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』(奥野修司、徳山大樹/講談社)

 平成の時代、日本での爆買いなど、たしかに中国の富裕層の増加と経済成長は、目を見張るものがあった。しかし一方で、「中国食品企業の恐ろしい実態が印象に残った」という人は多いだろう。

 それもそのはずで、中国産食品をめぐっては2007年に「段ボール肉まん」「冷凍ギョーザによる食中毒事件」、2013年には「病死鶏のチキンナゲット」などがニュースになったからだ。

 2007年12月から08年1月にかけて、千葉県と兵庫県で発生した「冷凍ギョーザによる食中毒事件」はしかし、中国当局のその後の調べにより、製造元従業員が会社に対する怨恨から犯行に及んだ異物混入事件だったことが判明。組織ぐるみの違法ビジネスなどではなかった。

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 むしろ、中国食品ビジネスの恐ろしさを知ることになったのは、2007年7月にニュースになった「段ボール肉まん」事案だろう。

●段ボール肉まんは、本当に作られていた!?

 2007年7月、中国のテレビ局が「中国の露店では、段ボールを食材として加工使用した肉まんが売られている」と告発。しかしその後、「あれはねつ造だった」と告発したテレビ局が謝罪。日本のメディアも「あれはウソだった」と報じて終わっている。

 ところがである、「段ボール肉まんは、本当に作られている」と、告発する人物がいたのである。

 その中国食品ビジネスの実態の裏の裏を知る人物が登場するのが、現地潜入調査レポート本の『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』(奥野修司、徳山大樹/講談社)だ。

 その人物とは、中国の食品会社と30年来の付き合いのある日本の食品会社社長だ。中国食品事情の実態調査に向かった著者に対して、現地でその社長は「北京のテレビ報道が嘘か本当かはわからない」としたうえで、「でも、(段ボール肉まんを)作っている場所に連れて行ってもらって、食べたことがあるんだ」と明かし、こう続けている。

「だから、本当に作られているんです。味? これが美味しいんだ。特殊な薬品に段ボールをキャベツの千切りみたいに刻んで漬け込み、それをひき肉や玉ねぎと合わせて肉まんを作るだけ。紙が入っているなんて全くわからない。偽物を作らせたら、中国人は世界一だね」

 著者が「その現場に潜入したい」と願い出ると社長は、「作っている連中はマフィアみたいな連中なんだ。バレたらただでは済まない。日本へ帰れなくなるよ」と、著者を諭している。

●企業だけでなく政府機関も不正に一役買っている?!

 本書は、2013年にニュースになった「病死鶏のチキンナゲット」にも触れている。「中国の大手食品企業が、病死した鶏肉を中国国内のマクドナルドやケンタッキーフライドチキンに卸していた」ことが発覚。その後の調査で、日本マクドナルドもこの企業からの鶏肉輸入を認めたという恐ろしい問題だ。

 著者は、日本マクドナルドが製品管理を中国企業にほとんど一任していたことに触れ、「中国企業の実態を知らなすぎた」と指摘している。そして「中国当局の(食品の安全性をチェックする)検査機関なんて、札束を掴ませればどんな報告書だって書いてくれることは、中国と長く取引をしている業者ならだれでも知っている」と記している。

 つまり、中国との食品ビジネスをめぐっては、企業であろうと政府機関であろうと現地任せにはできない、という実態があるのだ。

 本書には他にも、日本に輸入されている海鮮食品、学校給食に入り込んでいる中国食材など、さまざまな「怖い中国食品」の実態調査や、事情をよく知る日本の食品会社社員の告発などが報告されている。また、中国だけではなく、アメリカ産の牛肉や遺伝子組み換え食品の実態についても、詳細な情報が満載されている。

 こうした本書を読んでいていちばん恐ろしく感じるのは、「怖い食品ビジネス」は、決して作り手だけでは成立しないという現実だ。その裏事情や消費者の存在にはなかば目をつぶってでも輸入・販売し、なんとか利益を上げようとする会社が世界中にあって初めて成立しているのである。

 この深刻な負のスパイラルはきっと、平成の世が終わり新たな元号の時代が始まったとしても、「拝金主義の世」「売上至上主義の世」が続く限り、まだまだ続いていくのだろう。

文=町田光