えっ、プリウスで12万円も増税!? 恐怖の「走行課税」シミュレーション
公開日:2018/12/14
自動車に掛ける税金の仕組みを変えようという動きが出ている。「走行課税」と呼ばれる「走った分だけ税金を払う」という新しい課税を考えているようだ。なぜ走行課税なのか? 簡単な表を作ってみたので御覧頂きたい。燃費12km/Lの1800cc車で年間2万km乗っていた場合、現状の税負担は14万8600円になります。
一番重い税負担はガソリンに含まれているガソリン諸税で、1リッターあたり53円60銭。この税金に消費税も掛かるため(税金に税金を掛けている!)、実際には58円10銭となる。ここまで読んで鋭い方なら「実質的な走行課税ですね」と認識することだろう。その通りで、現状も走行課税といってよい。なぜ変えようとしているのか?
大きな要因はハイブリッド車など燃費良いクルマが増えたからだ。2つ目の表はプリウスの年間税負担。走行距離を同じにした場合、8万7900円になってしまう。燃料消費量が半分になるため、ガソリン諸税も半分になるという寸法。さらに税収少ないのはガソリンを使わない電気自動車で、リーフだとわずか2万9500円になる。
直近の10年で燃費の良いハイブリッド車や軽自動車の急激に普及し、只でさえ税収が落ちてしまった。電気自動車やPHV(50km程度なら電気で走れるハイブリッド車)の増加により、今後さらに税収は減ってしまう。今のうちに何とか自動車から税金を取るシステムを作っておきたい、というのが今回の税制変更の狙いである。
■「新税」は電気自動車やPHVからもガッチリ徴収する
当局はどの程度の走行税を考えているだろうか? 走行課税と同時に排気量別の自動車税を下げる方向で見直すようだ。重量税も消費税の10%化と同時に廃止される模様。表4は日本に於ける平均的な乗用車の走行距離(およそ1万km)で考えた時の収税額です。新たな走行課税を加え、同等の収税額になるよう新税を考えることだろう。
表5が新税の試算。年間平均1万km走る乗用車であれば1kmあたり7円程度の走行課税をすると、現状と同等の収税になる。ガソリン諸税を取れない電気自動車やPHVも、走行課税なら収税可能。加えて平均的な走行距離の使い方であれば、増税にもならない。週末にしかクルマを使わない都市部の人からすれば減税になるほど。
一方、クルマが必需品になっている地域で、なおかつ年間走行距離の多い使い方だと大幅増税になってしまう。表6はハイブリッド車に年間2万km乗る人の試算だ。現在表2の8万7900円が、20万8400円になるから深刻。税制変更の詳細は発表されていないものの、年間走行距離の多い人は間違いなく負担増になると考える。
文=citrus 自動車評論家 国沢光宏