三島由紀夫『暁の寺 豊饒の海(三)』あらすじ紹介。58歳が官能的な18歳の美少女に抱いた恋心
更新日:2023/7/12
『豊饒の海』は三島由紀夫生涯最後の長編大作。「春の雪」「奔馬」「暁の寺」「天人五衰」の全4巻で構成される、輪廻転生をテーマにした物語。禁断の恋、右翼思想、官能的美女、悪魔的少年を魂が巡る。本作の完結直後に三島は、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地に乗り込み割腹自殺。日本史に残る「三島事件」を起こした。
・「暁の寺」あらすじ
47歳になった本多がバンコクで仕事をしていたところ、ジン・ジャンという7歳の王女と出会う。彼女は「自分は日本人の生まれ変わりで、本多のことも覚えている」という。彼女の前世の記憶は正確だったが、清顕(1巻の主人公)、その生まれ変わりと信じていた勲(2巻主人公)の脇腹には3つのほくろがあったが、ジン・ジャンにはなかった。その後本多はインドを旅行し、仏教の輪廻転生や唯識の思想に触発され、戦争中は仏教の研究に明け暮れた。
日本は終戦を迎え、本多は58歳となった。裕福になった彼は御殿場に別荘を建て、久松慶子という隣人や、かつて勲の恋人であった歌人の鬼頭槙子、その弟子、ドイツ文学者などを招いていた。
本多は日本に留学しているジン・ジャンと再会する。美しく官能的な18歳に成長した彼女は、自分が勲の生まれ変わりだと主張していたことを憶えていない。あろうことか本多は彼女に魅了され、恋心を抱き、そして翻弄されていく。
本多は別荘のプールにジン・ジャンを招き、脇腹にほくろがないことを確認し、さらにその夜、彼女が泊まっている部屋を覗き見する。彼女は客の慶子婦人と裸で抱き合い、レズ行為をしている最中で、その脇腹には、3つのほくろが浮かび上がっていた。その光景を見た本多が驚いている間に別荘が火事になり、別の部屋に泊まっていた学者と鬼頭の弟子が死亡する。そして帰国したジン・ジャンも消息を絶つ。
それから15年、73歳になった本多はジン・ジャンの双子の姉に会う。彼女は、「妹は20歳の時、コブラに噛まれ死んだ」と言った。
文=K(稲)