誰でも失敗せずにお菓子を作れるコツって? 家庭で作るお菓子はもっとおいしくなる!
公開日:2018/12/22
オーブンから漂ってくる甘い香り。小さい頃に、台所で母親が作ってくれた手作りの焼き菓子を楽しみにしていた人も多いのではないだろうか。手作りならではの素朴で温かみのあるお菓子を作りたいと、お菓子の本を買っては日々新しいレシピに挑戦している人も少なくないはずだ。しかし、お菓子づくりはとても奥が深い。材料を正確に計量し、手順をきっちりと踏まなければおいしいお菓子ができないといわれるため、料理に比べてハードルが高く感じることもしばしばだ。
ムラヨシマサユキ氏は料理だけでなく、手軽に作れるお菓子のレシピも提供している人気の料理家だ。『お菓子はもっとおいしく作れます!』(主婦と生活社)では、彼が長年作り続けてきた本当においしいお菓子の作り方を紹介している。
お菓子づくりの初心者がまず挑戦するのがクッキーではないだろうか。材料を混ぜて生地を作り、型抜きやカットをしてオーブンで焼き上げるお菓子だ。バターが香るクッキーの項では、バターを室温に戻す、卵を数回に分けて加える、粉の混ぜ方、生地を均等にのばすコツなどを丁寧に解説してもらえる。「そんなことまで気を使うの?」と突っ込みたくなるかもしれないが、これらのプロセスを踏むことでよりおいしいお菓子になるという。読者を納得させるために失敗例も写真付きで掲載してあるので、とても説得力があるのだ。
たとえば、材料を混ぜ合わせた生地を一度冷蔵庫で寝かせるのはなぜ?という疑問には、以下のように答えている。
薄力粉もしっかりと混ぜたため、生地に余計な固さやコシが出ています。冷蔵室で休ませてコシを落ち着かせ、食感が悪くなるのを防ぎましょう。
生地を寝かせるということは知識として知っているが、それが何のためなのか?と聞かれると答えることができる人は一体どれくらいいるだろう。お菓子づくりの小さな疑問を解決することでひとつひとつのプロセスが意味を持ち、腕が格段に上達するようだ。
本書では、基本的なお菓子の作り方を紹介した後に、アレンジレシピが掲載されているのもうれしい。バタークッキーにナッツやココアをプラスしたり、上からレモンアイシングを施したりと、まったく表情の異なるお菓子に仕上がるためバリエーションを増やすことが可能だ。何度も作って慣れてきたら、自分なりのアレンジも自由に加えることができるようになるだろう。
また、バターをたっぷりと使用したパウンドケーキは、ぎゅっと詰まった重みのある生地に焼けがちだが、本書では口当たりが軽いケーキのレシピを紹介している。ポイントは、バターの「空気をたくさん含むことができる特性」を利用すること。はじめに、バターと砂糖を白っぽくなるまでしっかりと混ぜ、空気を含ませることが大事だと著者は説く。その後も、卵を数回に分けて加える、生地を型に入れたら表面をヘコませるようにならすなどたくさんのポイントがあるので、まずは一度じっくりと本を読み込んでからお菓子づくりにとりかかったほうがよさそうだ。他にも、シフォンケーキやショートケーキ、ガトーショコラ、スコーンなど、ページをめくるたびにぜひとも作ってみたいお菓子に出会えることだろう。
さらに、この本の特徴としては、主なレシピについて動画がついていることが挙げられる。レシピについているQRコードを読み取る、もしくは限定サイトにアクセスするだけで、動画を見ることができるのはうれしい。動画ではムラヨシ氏の解説と共に、手の動きや生地の状態を実際に見ることができるので、文章や写真からだけでは伝わらない細かいニュアンスが感じ取れる画期的なお菓子本といえるだろう。
文=トキタリコ