インフルエンザ流行期到来! 予防接種の効果はどれくらい? 感染症対策のプロが解説

健康・美容

公開日:2018/12/15

『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』(岩田健太郎/ベストセラーズ)

「インフルエンザ流行期に突入」「各地で学級閉鎖」といったニュースをしばしば目にする季節になった。感染すると高熱が続き、そして感染力が強いインフルエンザだが、感染しないために推奨されるのが、ワクチンの予防接種だ。

 しかしこのワクチンは、本当に効いているのだろうか? 『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』(岩田健太郎/ベストセラーズ)は、ニューヨークで炭疽菌テロ、北京ではSARS(重症急性呼吸器症候群)流行時の臨床を経験し、現在は神戸大学教授を務める著者が、インフルエンザをはじめとする感染症についての知見をわかりやすく解説する1冊だ。

■インフルエンザワクチンの「効き」はどれぐらいなのか?

 インフルエンザがなぜ冬に流行するのかというと、寒くて乾燥しているところでウイルスが活発になりやすいから、というのが原因のひとつだそうだ。そして、その予防方法のひとつとして普及しているのがワクチンの予防接種だが、予防接種をしてもインフルエンザに感染する人はいるし、予防接種をしなくてもインフルエンザに感染しない人もいる。

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 果たして、インフルエンザワクチンは「効いている」のだろうか? 著者曰く、結論は「効いている」という。しかし、100%ではないという。ワクチンが「効く」というのは、以下の事実を指している。

ワクチンを打った場合と、打たなかった場合で、
インフルエンザになる確率が違い、
ワクチンを打った方が、インフルエンザになりにくい。

 著者が提示するアメリカの疾病対策予防センターのデータによると、2017~18年の冬のアメリカでのインフルエンザワクチンの効果は36%、ざっと3割強だ。「3割」と聞くと少なく感じる人もいるかもしれないが、インフルエンザは非常に流行性が強い感染症のため、とてもたくさんの患者が発生する。その3割というと大きな人数だ。

 また、多数の苦しむ患者が減るだけではない。医療機関にとっては、インフルエンザ患者に対応する負担が減るため、その分の人的資源を、ほかの治療を必要としている重症患者に振り向けることができるし、医療事故発生のリスクも減るというメリットが生まれる。

 数のメリットだけではない。インフルエンザワクチンは、効果がコンスタントに安定しているということも特筆すべきポイントなのだそうだ。そして、ワクチンそのものの安全性も高いという。

 また、本書では、インフルエンザの他に、最近ニュースを賑わせている風疹や麻疹についても、そのワクチン接種の重要性について説かれている。自分のためにも、そして周囲の人のためにも、ぜひ本書を手に取って正しい知識を得てほしい。

■感染症についての正しい知識を得るために

 本書ではこの他にも、感染症についてのさまざまな情報が、私たちの生活に身近なものを題材にしながら説明されている。どの情報も、根拠となるデータ元が明示されているので、妥当性が高い内容がしっかり選ばれているという印象を受ける。

 感染症や健康についての情報は、つねに変化しながら私たちの身の回りにあふれている。その中から正しく必要な情報を選び取り、自分の生活に取り入れていくための一助として、本書を手に取り、この冬を乗り切って頂きたい。

文=水野さちえ