トイレの男女マークは東京オリンピックが発祥ってウソ/ホント!? 【よく見かける表示の謎】連載第6回
更新日:2018/12/14
街を歩くとき、スーパーで日用品を買うとき、さまざまな表示や記号が私たちの目に入ってくる。当たり前の光景としてふだんは見過ごしているけれど、よく観察してみると、「コレってどういう意味?」と気になることも多いはず。そんな疑問をひもとくために、豊富な知識がぎゅっと詰まった『暮らしの中の表示 知らないと困る最新知識』(博学こだわり倶楽部:編/河出書房新社)から、今知りたい情報や、人に教えてあげたくなる旬のネタをご紹介したい。
■トイレの男女マークは日本発祥。お披露目は1964年の東京オリンピック!
トイレの一般的なサインは、男性が青色でズボンを穿いたマーク、女性は赤色でスカートを穿いたマークであり、国内だけでなく海外の旅先でも同じサインを見たことがあるだろう。
実はこのサインは日本発祥で、1964年の東京オリンピックのためにつくられた。当時はまだ来日外国人が少なく、文化風習が異なる人たちをどうもてなすかが大きな課題となっていたという(本書209ページ)。
1964年の東京五輪には93の国と地域が参加しており、言語だけの表示で外国人選手や観光客に案内することには限界がある。そこで白羽の矢が立ったのが、絵文字によって視覚的に情報を表す「ピクトグラム(ピクトグラフ)」だ。オーストリアの学者の原案をもとに黒一色でデザインされた図案だったが、国や文化によっては男性がスカートを穿く地域もあるため、青色と赤色という識別しやすい2色で表現するサインが採用された。
こうやって生まれたピクトグラムは、国際標準に揃える形で微修正を加えながらも、現在でも身の回りのいたるところで目にすることができる。実用的な機能と、「おもてなし」という心がまえがうまく合致したプロジェクトのひとつだろう。さて、2020年の東京オリンピックから、後世に残る“新しい何か”は生まれるだろうか?
本書では、生活のいたるところで目にする表示や記号、マークについて、「隠されている本当の意味」をわかりやすく説明してくれる。どれも実用性の高い豆知識なので、賢い消費者になるためにも、ぜひ本書を手に取っていただきたい。
文=田坂文